ArayZオリジナル特集

行って、見て、知る タイ企業 ~食品ビジネスとマーケティングの今~

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Wongnai Media Co.,Ltd.



Yod Chinsupakul 氏
Co-Founder & CEO


タイで最も有名な飲⾷店クチコミサイト「Wongnai」を運営するWongnai Media Co., Ltd.。

⽇本で⾔うところの「ぐるなび」「⾷べログ」的な存在のウェブメディアであり、会員数は100万⼈以上を誇ります。20万店舗以上の飲⾷店のほか、美容室やスパなども掲載されており、それら店舗へのクチコミ件数は300万件超。

乱⽴の激しい飲⾷店業界で重要な情報源として、Facebookや Instagramなどと並び多くのタイ⼈に利⽤されているメディアです。創業は2010年。19年の上場を目指し、CEOのYod氏は「飲⾷系の広告出稿では、敵は Facebookのみ」と自信を見せます。

転んでもただでは起きない

米国留学を経て、タイで未発達なデジタル業界に変革を起こしたいと2010年、グルメ口コミサイト「Wongnai」を設立しました。当時はタイでFacebookが流行りだした頃です。プログラミングが得意な友達と始めたものの、立ち上げから6ヵ月は無給という苦しい日々でしたが、「タイでナンバー1になる!」という熱意だけでのめり込んでいきました。

しかし、飲食店紹介に必要な口コミは一向に増えず、2年間Wongnaiでの収入はゼロ、他から仕事を取ってきて先をつないでいました。その間は口コミを増やすため、SEO対策、動画作成、チラシの配布、ユーザーパーティー、ラジオ広告などを試しました。MBKの小さなショップのオーナーさんに、「お客さんがスマートフォンを購入して初期設定をするついでに、Wongnaiのアプリを入れてほしい」と、謝礼を渡してお願いしたこともあります。一発で成功するとは思っていませんでしたから、できることはすべてやりました。ひたすらトライ&エラーの繰り返しです。

その際、忘れなかったのは必ずトライに対し効果を測定することで、効果の出た方法にお金をかけていきました。2012年には、パソコンを利用することなく、スマートフォンデビューした人が増加したことに後押しされ、会員数が10万人に急増。そこからは勢い付き、2015年には会員数・投稿数ともに10倍の規模に成長しました。

2013、14年にはリクルートホールディングスから出資を受けています。世界から出資の話はありましたが、マネタイズに優れた「ホットペッパー」の実績を持つ同社に決めました。

現在は、LINEと共同運営のフードデリバリーサービス「LINEマン」のほか、宿泊施設に関するサービス事業も展開しており、ユーザー数は約280万人、そのうち月間アクティブユーザーは約50万人、登録店舗数は約30万店舗、口コミ投稿数は100万件を超えています。

上場の先にみるもの

今は飲食店を中心に掲載していますが、これに限らず「良いモノ・必要なモノを人々につなぐ」という当社の企業理念に基づき、利用者の人生の出来事にWongnaiがあるようになって欲しいですね。

上場の目的は愛国心かもしれません。近年世界中の人々がLINE、Facebook、Twitterなどのアプリを利用していますが、タイ生まれのデジタル産業は一つもありません。タイで独自のデジタル技術やアプリを開発してタイに収益が残るようにならなければ、多国籍企業の植民地になるのではと危惧しています。他にも今まで投資してくれた皆さんへの恩返しの気持ちもありますが、単純に上場したら超クール!


「Wongnai」のマスコット

Sritchand United Dispensary Co., Ltd.


Rawit Hanutsaha氏
Chief Executive Officer

約70年の歴史があるSrichand United Dispensary Co., Ltd.は、“ダサい”から⼀新! ⽣まれ変わった⽼舗化粧品メーカーです。同社が製造販売を⼿がける化粧品「SRICHAND(シーチャン)」は、10年ほど前まで昔ながらの古い化粧品というイメージが強く、販路もTT(トラディショナルトレード)に限られており、バンコクなどの都市部では知名度が低く若者が使うブランドではありませんでした。

しかし2007年、創業者の孫ラウィット⽒がCEOに就任してから、徹底した消費者調査に基づき若者に好まれるパッケージにリデザイン。同時に新商品を投下し、わずか3ヵ⽉で売上を2倍に⾼めることに成功。現在は年商7億バーツ、ディズニーとのコラボ商品を手掛けるまでになりました。

大切なのはビジョン

1948年、祖父が薬局を開業しました。当時薬局では「SRICHAN(シーチャン)」という女性用フェイスパウダー(18バーツ)を製造販売していましたが、バーコードも付いていない古臭いデザインで、自他ともにさえない商品という認識でした。2007年に事業を継ぎ、パッケージを変更してみましたがお客様は振り向かない。お客様にインプットされた「さえない商品」というイメージはなかなか変えられませんでした。

大きな変革を必要としていた当社は、コンセプトを根底から変えなければならないと思い、マーケティングに関するありとあらゆる書籍を読み漁りました。それらの本から知ったのは、私よりも年上の社員10人の気持ちを離さず、変化を嫌う組織を動かすには、ビジョンを明確にし、共有することが重要だということ。

そしてそのビジョンは、社内だけでなく社外にも伝えることが大切ということでした。そこで始めたのがお金のかからないブログです。社内外に発信でき、次第に社外の当社を見る目が好意的なものに変わっていきました。


2017年現在のパッケージ

コミュニティに入り込む

「何かを変えたければ引きこもっていてはいけない」。

私はお客様の声を聴きに外へと出ていきました。社内に引きこもり多くの時間をかけて、「これ最高!」と思った商品が売れる訳ではありません。化粧品を使う女性たちの本音は、オフィスにいては分からないでしょう。

お客様の声を聴いた商品、つまり、コミュニケーションができている商品が売れるのです。

「なぜ化粧をするのか?」「使用するタイミングは?」といった質問を、頭をからっぽにして仮説を立てずに聴きに行きました。女性たちのコミュニティの外から話しかけるのではなく、彼女たちのコミュニティに入れてもらって対等に話をしたのです。

これは商品を売る姿勢にも通じます。近年、83%の消費者は4F(フレンズ、ファミリー、ファン、フォロワー)のコメントを参考にしているそうです。様々なコミュニティに商品を友達のように入れてもらわなければ売れないということです。

変化に慣れる文化を作る

私たちが生きている時代は変化が激しく、予測不可能な世界です。経営者としては「組織のマインドを変えること」「何事も速く行うこと」など、変化に慣れる文化をつくっていきたいと思っています。化粧品業界は、この2、3年で大きく変化すると感じています。サプライチェーンを巻き込んで改革していき、うまくいけば東南アジア他国に進出していく予定です。

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