ビジネス・経済 2017.06月号

日本とアジアの違いを足で調査 労務管理ノウハウを体系化

ASEAN地域で活躍する日系企業を紹介
ASEAN×BUSINESS×PERSON
多田国際社会保険労務士事務所


多田智子 ただ ともこ

労務管理や社会保険の専門家として、企業の人事労務に関する相談やトラブルを未然に防ぐためのアドバイスを行うのが、日本の国家資格である社会保険労務士だ。
多田智子氏は2001年、同資格に合格。02年に多田国際社会保険労務士事務所を設立し、現在は顧客企業の海外法人における労務管理にも対応している。
労働法の構造や内容は国によって異なるため、就業規則など諸々の規程を作成する際は、現地の法律に適合させる必要がある。しかし、アジアの新興国では法規制が十分に整っておらず、解釈が曖昧で、法律遵守の精神も薄い。このような国では日本企業が欧米進出で培ってきたノウハウが活きないうえに、専門コンサルタントの発掘・選定も難しい。現地での労務管理に苦慮する日本企業からの相談が増えたことを受け、多田氏は7年前から定期的にタイをはじめとする現地へと足を運んでいる。

日本企業、なぜ不人気?

タイの法律と運用の実情を知るために、最初は現地の専門コンサルタントを探してみたが、法的根拠のある一貫した回答が得られず、自分の足でタイ人弁護士を訪ねることで判例と情報収集を重ね、現地労務について体系化していった。
日本企業のタイ法人駐在員から相談を受ける中、ある言葉が多田氏の胸に残ったという。
「『日本の企業はタイで人気がない』と聞いて、上海の日本人駐在員の方にも同じことを言われていたことを思い出したんです。世界的に優秀な日本企業が、なぜ海外では人気がないのか。もしかしたら、その原因は日本の労務管理の手法にあるのではないかと思いました。終身雇用の文化がある日本では、会社は辞めないのが当たり前、全員が管理職になるために頑張るのが当たり前ですが、タイ人にこの考え方は理解できません。日本企業の海外法人における労務管理を難しくしている理由が、この考え方の相違にあるのならば、日本と世界で異なる、労務管理の前提条件について知ることが、労務管理手法の習得につながると考えました」。

客観的な視点で労務管理を考える

多田氏は日本人駐在員が赴任事前に、現地の法律知識と、現地スタッフとの接し方を学ぶことを推奨している。一般的に、海外進出直後は日系同士での取引がメインとなるため、社外よりも、異文化コミュニケーションが求められる社内問題でつまずきやすいからだ。自身も各方面でセミナー講演を行っており、バンコクでも2015年から、日経ビジネススクールアジアの日本人駐在員向け講座において、タイ労務関連セミナーを開催している。
「タイだけでなくアジア全体に言えることですが、『長期雇用が前提ではないこと』、『現地管理職者が極めて少ないこと』、『日本に比べて職業能力が高くはないこと』を踏まえ、どう対応するかを客観的に考えることが、労務管理の鍵になります。日本では自分の職務外まで対応することが評価されますが、労働契約における明確な職務以外はしないのが世界のスタンダードです。この違いを目の当たりにし、それに不満を持つのではなく、人間の本質としてストレートに受け止めることが大事です。悩んでいる方こそ、お一人で悩まず、タイの法律を基礎から体系的に学び、日々疑問に思っていることを解消しにいらしてください」。

7月26日・27日に多田氏による『タイ駐在員のための労務管理の基礎知識』『駐在員のためのタイ労働法・就業規則の実務』セミナーがバンコクで開催されます。

多田国際社会保険労務士事務所
TADA INTERNATIONAL SOCIAL INSURANCE & LABOR CONSULTANT OFFICE
東京都品川区大崎1-6-1
TOC大崎ビルディング17階
+81(0)3-5759-6340
www.tk-sr.jp

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