ビジネス・経済 2017.10月号

一気通貫のバリューチェーン構築で日本農業の構造改革を目指す

ASEAN地域で活躍する日系企業を紹介
ASEAN×BUSINESS×PERSON
NIHON AGRI, INC.


河合秋人 かわい しゅうと

2016年、5人の青年が、農産物の海外輸出販売を手掛けるスタートアップ企業・日本農業インコーポレイテッド(以下、日本農業)を起ち上げた。
CEOを務める内藤祥平氏は、自他ともに認める根っからの農業好き。慶應大学在学中にはイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校農学部に留学、卒業後はマッキンゼーの日本支社で、農業セクターのメンバーとして活動していた経歴を持つ。
内藤氏を取り囲むメンバーは全員、慶應大学付属高校時代の同級生だ。それぞれ投資銀行や商社に就職していたが、脱サラして〝日本の農業を強く、農家を豊かに〟をミッションに再集結した。

河合秋人氏も、新卒で入社したITベンチャーを辞めて日本農業に参画した一人だ。
「農家がどんなに良い作物を作っても、日本全国が豊作だった年には供給過多で単価が下がり、儲かるのは他産地が不作で自分たちだけが豊作だった年だけ―というのが現在の構造です。日本国内の農産物消費需要が減り続けている今、時代に見合う構造改革と産業化を行うべきだと考えました」。

同社では、日本の農家が作った高品質な青果物を海外で適正な価格で売ることで、作った分だけ儲けることのできる仕組みづくりを目指し、商社として生産農家と売り手である現地小売業者と提携。一気通貫のバリューチェーンを構築しようと動き出すも、最初は農家にも物流会社にも断られ続けたという。若さと情熱を買ってくれたのは、自身も24歳で起業したという青森県弘前市の農業生産法人・青研の竹谷勇勝社長だった。

「農家のために」が事業選択の判断基準

日本国内市場向けに作られるりんごは大玉が多い。そのため農家は間引きしながら大玉のりんごを少数生産するのが一般的だが、同社では生産組合と話し合い、海外市場向けに小玉を多量生産してもらっている。販売先として日本農業が目をつけたのは東南アジアだ。親日国が多いが、台湾や香港に比べると日本産青果物の流通はまだ少ない。
りんごの出荷シーズンとなる10月からは、いよいよタイでの販売を開始する。現地パートナーである輸入業者と検討し、ギフトボックスの商品を開発。年末贈答用需要を取り込みたい考えだ。大手スーパーマーケットである、グルメマーケットとテスコロータスでの販売合意にこぎつけた。

河合氏は、農家を豊かにするというミッションに加え、持続性があるかどうかが事業を考えるうえで大事な軸になっていると話す。「タイのスーパーマーケットでは、日本がローシーズンとなる夏季に、ハイシーズンを迎えるニュージーランド産に取って変わられてしまいます。日本の保存技術ならりんごは年中輸出できますが、無理にりんごを出し続けるのではなく、夏季は日本がハイシーズンとなる桃やマスカットの輸出を計画中です」。

今後はフィリピンやマレーシアでの販売も視野に入れつつも、その先に見ているのは中国市場だという。実はメンバーの一人、周 無央氏は日本語と中国語、英語を操るトリリンガル。日本の10倍もの人口を擁する巨大な市場での可能性は未知数だが、「これまで成功したことのない何かを成し遂げる時には、困難はつきもの」と河合氏。日本の農業構造変革に突き進む。

2017年6月には、タイの輸入業者が青研を訪問

タイで販売を開始するギフトボックスは300バーツ~


株式会社日本農業インコーポレイテッド
東京都中央区銀座3-11-17 902号
http://nihon-agri.com

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