ビジネス・経済 2017.09月号

現地社員で自走できる基盤づくり 元エンジニア社長の組織管理術

ASEAN地域で活躍する日系企業を紹介
ASEAN×BUSINESS×PERSON
SEI INTERCONNECT PRODUCTS (THAILAND) LTD.


三宅久裕 みやけ ひさひろ

フレキシブルプリント回路(FPC)製品を生産する、住友電工グループのタイ法人、SEI INTERCONNECT PRODUCTS (THAILAND) LTD.。同社を2011年に起ち上げた三宅久裕社長は、住友電工のIE(Industrial Engineering)の専門家として、自動車用ハーネス、電子機器などさまざまなプロジェクトで品質や生産性の改善に携わった経歴を持つ。1998年、三宅氏は入社17年目で、技術指導を行うため、稼働して半年のフィリピン工場へ赴任となる。

「フィリピン人の工場長と製造の基盤を築き、赴任当時400人だった社員数は、7年の赴任を終える頃には2000名規模に拡大していました」。

帰任後、日本で工場長を務めて1年でベトナム赴任の辞令が出た。建築段階からハノイ工場起ち上げに携わり、2007年に初出荷を迎えると同時に、離れていた間に経営が悪化してしまったフィリピン工場に呼び戻される。社長として赴任して4年が経った頃、今度は現在のタイ工場を起ち上げる指示が出た。フィリピン工場と兼務しながら、バンコクのグループ会社内にデスクを構えて設立業務を行い、2011年8月には量産を開始した。

現地社員の視点で考える

フィリピンをV字快復させた三宅氏は2014年、次なる立て直し先として中国・深セン工場に社長として赴任する。深セン工場の社員数は約1万5000人。「その大多数が社長の顔すら知らず、『こういう生産をしましょう』と言っても伝わらない」と思い、毎週月曜の朝、門に立って社員に挨拶を半年ほど続けた。最初は無反応だった社員たちが、徐々に挨拶や笑顔を返してくれるようになり、「少しは総経理(社長)の顔を知ってもらえたはず」と笑う。地べたで休憩していた社員用にベンチの設置をはじめ、ES(Employee Satisfaction)運動を行って、社員に寄り添うマネジメントで工場を上向かせた。

2016年、深センからタイ工場へ赴任となる。タイで生産しているFPCは、ハードディスク用の製品だ。ハードディスク市場は縮小傾向にあるが、ビッグデータの活用普及でまた今後伸びる可能性もある。現状は厳しいが、三宅氏は品質とサービスを維持することで、今の事業をやり遂げたい考えだ。

「2016年の赴任時、もうこれ以上は下がらないとされていた不良率を、この1年で約6割減らしました。ここからさらに半減しようと、社員が取り組んでくれています。一人一人が会社の利益に貢献していると思うことが、結果として品質と効率の向上につながります」。
現在、タイ法人の日本人駐在は三宅氏のみだ。「現地社員で自走できる基盤づくり」を目指し、タイ人管理層の育成に注力している。

「私はエンジニア出身で人事のプロではありませんが、今は人を創るマネジメントが私の仕事だと思っています。社員の視点に立ちすぎることが弱みになるかもしれないと思うこともありますが、着任時にはいつも、その拠点で何を目指し、何を目標とするのか、そしてそれを従業員とどう共有するのかを考えています。フィリピンの頃は事業を大きくして、規模を拡大する楽しみがありました。中国からタイに移った時は社員の規模が30分の1以下になって、娘に『それって左遷?』と聞かれたほどでしたが(笑)、タイでは事業を〝濃くする〟ことで勝負しています。会社には事業を大きくする夢も必要ですが、今がなければ、その先の夢は考えられないでしょう。だからまず今日と明日を確保し、それからタイ人と一緒に会社の将来を考えられるようにすることが目標です」。


住友電気工業株式会社
大阪市中央区北浜4-5-33(住友ビル)
www.sei.co.jp

SEI INTERCONNECT PRODUCTS (THAILAND) LTD.
700/128 Moo 5, Bangna-Trad Road, T.Klong Tam Roo, A.Muang, Chonburi 20000
038-465-809
www.sei-sect.co.jp

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