バンコク不動産投資

元外資系投資銀行アセットマネジャーが分析する! バンコク不動産投資最新動向

第9回 1ベッドルーム投資は可能な限りリスク軽減を

外資系不動産投資ファンドではオフィスビルやホテルなどに投資する際、投資委員会の審査をパスしなければならないのだが、その重要な審査項目の一つがリスク認識とそのミティゲーション(リスク軽減)だ。つまり、投資である以上、リスクは必ずある。従って、事前に想定できる重要なリスク要因を可能な限り洗い出し、その回避手段や軽減方法について検討審査していく。
しかし、実際の投資運用では想定外のことも起こるので、どんなにリスク分析をしても全てカバーするのは不可能だ。その最たるものがマーケットリスクである。すなわち、不動産市場の動きは政治、経済、税制改正、為替や金利などに影響されるため、マーケットリスクを完全にミティゲートするのは不可能なのだ。
当然、これは個人が不動産投資をする際にも当てはまる。しかし、そのマーケットリスクの中で特に注意をしなければならないのが需給バランスである。実物資産である不動産は供給過剰によって引き起こされる空室が非常に怖い。空室とキャピタルロスは表裏一体だからだ。
現在、日本人投資家の大半は1,500万円からせいぜい2,000万円のエントリーレベルの投資物件をバンコクで探しているが、このセグメントはタイ人アッパーミドルクラスがターゲットなので供給量も多い。一方、タイ人富裕層や香港、シンガポールからの外国人投資家は供給が少ないCBDのラグジュアリークラスを物色している人が多く、空室リスクは比較的小さい。

コンドミニアムの大量供給で変わる需給バランス

JLLタイランドの最近のコメントでこんな記述がある。「Competitive edge depends on size, with small units facing more competition and larger ones benefiting from tight supply」。つまり、「結局は広さがものを言う。小さなユニットは競争がますます激化し、供給の少ない大きなユニットはその恩恵を享受しつつある」。そしてこう続く。「ここ数年のコンドミニアム大量供給で賃貸市場が変わりつつある。全体としての賃貸需要は今も減ってないが、需要以上に供給があったスタジオや1ベッドルームは空室リスクが高まっている。一方、家賃が5万から7万5,000バーツの2ベッドルームは今も需給がタイトで空室リスクは低い。さらに注目すべきは、この2ベッドルームのセグメントにおいては、狭い新築より広い中古物件の方に人気がある」。

現在でもバンコクで建設中のコンドミニアムの実に7割がスタジオと1ベッドルームという調査結果が出ていることからも、この指摘には納得がいく。また、子供のいる家族連れ駐在員にとっては、同じ家賃なら手狭な新築よりも広い中古物件で余裕を持って暮らしたいということでもある。しかし、そうは言っても人気のロケーションで家賃が5万バーツ以上も取れる広めの2ベッドルームとなると大抵の築浅物件は日本人投資家の予算を超えてしまうし、築年数がかなり経った中古物件は出口リスクが高い。

リスクの低い投資物件とは?

では、限られた予算の中で投資できてしかも空室リスクと出口リスクの両方をミティゲートできるのはどれか?
45平米から50平米、家賃水準が3万から4万バーツ、築3年程度の1ベッドルーム、もしくは2ベッドルームではないかと筆者は考える。30平米台に比べて供給量も限定的で、単身赴任の駐在員は余裕を持って暮らせるし、夫婦2人連れの駐在員も住めることから、2つの入居者層をターゲットにできるので空室リスクも軽減する。しかも2,000万円程度で買える物件も少なくないからだ。


藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコク コンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。
連絡先:087-481-9709
bkk.condostory@gmail.com

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