ビジネス・経済 2017.07月号

元外資系投資銀行アセットマネジャーが分析する! バンコク不動産投資最新動向

第15回 デベロッパーが言わない、本当は一番怖い空室リスク

投資利回りよりキャッシュフロー

筆者は、バンコクの不動産投資では投資利回りにあまり固執しない方がいいと思っている。日本でも不動産投資で利回りに固執する人が多いのだが、賃貸需給が緩い市場では満室稼働時の高利回りを自慢しても仕方がない。空室リスクのミティゲーションが不可欠だ。1棟単位で買う機関投資家はこういう場合、空室引当率(Vacancy Allowance)を入れて予想キャッシュフローを走らせる。しかし、1ユニットだけ買う個人投資家には0か100かしかないのでリスク緩和にならない。それだけ家賃収入が途絶えるダウンタイムは怖いということだ。

特に1ベッドルームは注意が必要

ところが、どのデベロッパーや販売会社も賃貸した場合の市場賃料は、平米あたりXXXバーツで利回りは何パーセントと詳しく説明してくれるが、一番知りたい周辺同等物件の空室率については口をつぐむ。こんな素晴らしい新築物件なのだから、当然入居者はすぐに見つかるはず、というわけだ。しかし、そんなに話は単純ではない。特に30㎡前後の1ベッドルームはこれまでの大量供給の結果、空室リスクが非常に高くなっている。デベロッパーが売りやすい手頃な価格帯を維持するために専有面積の小さい1ベッドルームやスタジオユニットにシフトした結果、狭小物件が溢れるようになった。市場では現在、4万3,000ユニットもの完成済販売在庫があると報告される中、その大半が1ベッドルームやスタジオなのだ。

そして、多くの一般投資家は金額的に手頃だという理由でデベロッパーの思惑通り小さな1ベッドルームに投資し続けている。しかし、余程のハイスペックか、駅から徒歩数分といった特別な物件以外、どこも入居者募集で苦戦しているというのが実態だ。そのあげく、手っ取り早くAirbnbなどを使って違法な民泊に貸し出す投資家、特に無責任な外国人投資家が増加している。

セールストークに惑わされない

筆者はこれまで数十回にわたり日本各地で不動産投資セミナーを開いてきたが、30代、40代の人達が将来の資産形成手段として、バンコクのコンドミニアムに熱い視線を注いでいることを実感している。しかし問題は、その大半がタイ人一般投資家と同様に予算重視の結果、似たり寄ったりの狭小1ベッドルームに投資していることだ。

さらにセミナー会場で、家賃XXXバーツで日本人駐在員に貸せる、と日系仲介業者に勧められて新築1ベッドルームを買ったが、もう1年以上も空室のままでどうしたらいいか、と相談にきた女性がいた。どうしてこの物件を買ったのですかと聞くと、その仲介業者のセールストークをそのまま繰り返す。それは筆者も知っている不人気プロジェクトだった。こんなの買ったらダメだと分かっているのに仲介業者が熱心に勧める理由は一つしかない。デベからのコミッションがいいということだ。新築はデベが保存登記までやってくれるので手間がかからない上に、あわよくば両手商売で買主からもフィーが取れるとなれば、業者は当然、こっちを売ろうとする。しかし、この業者を責めても仕方がない。結局、投資は自己責任だと自覚してしておくべきなのだ。

IRR(内部収益率)で投資を考える

筆者自身もアソークで36㎡の1ベッドルームに投資していたことがあるので、このセグメントの物件はテナント付けが難しいことを経験している。イールドプレイをする中長期投資の場合、ダウンタイムは確実にIRR(内部収益率)を悪化させる。すなわち、投資のNPV(現在価値)という観点から見れば、賃料収入は売却益より影響が大きい。

バンコクの賃貸物件は家具一式付いていることから、1ベッドルームに住む独身者は賃貸契約の1年がくるたびに転々と引っ越す人が多い。だから日本と違って、投資家はオーナーチェンジ物件に大して魅力を感じてない。であれば、出口は入居者が退去後、と腹をくくり、投資利回りを犠牲にしてでもダウンタイムを避けることを優先しIRRを上げていくべきなのだ。


藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコクコンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。
連絡先:087-481-9709
bkk.condostory@gmail.com

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