ビジネス・経済 2017.09月号

元外資系投資銀行アセットマネジャーが分析する! バンコク不動産投資最新動向

第17回 続々と参入する日系デベロッパー、武器は低コストジャパンマネー

日本の大手4社、バンコクに揃い踏み

日本の総合不動産デベロッパー大手4社といえば、三菱地所、三井不動産、東急不動産、野村不動産だ。最近はそれに住友不動産を加えて大手5社ともいわれるが、先月、東急電鉄(東急不動産ではないが東急グループの中核)がバンコクのコンドミニアム市場に参入すると発表し、この大手4グループがバンコクに出揃った。
下記の表が住宅供給量で上位10社を占めるタイのデベロッパーだが、日本の大手4社全てがこの10社のいずれかとジョイントベンチャー(JV)を組んでバンコクのコンドミニアム市場に参入したことになる。

これ以外にも東京の上場企業ラ・アトレ、関西勢では阪急と信和が、九州からはアソーク駅前開発で西鉄が参入した。さらに、住不やフージャースも機会を模索しているとの噂が聞こえてくる。 では、何故最近になって続々と日本のデベロッパーがバンコクの市場に参入しているのか。

数年前、地所と三井不がタイの不動産市場に参入したのを見て、日経新聞がこんな記事を書いた。「今後マーケットの縮小が確実視されている日本の住宅市場から、大手デベロッパーは東南アジアの住宅市場に軸足を移し始めている」。 天井圏に入った日本の不動産市場 ところでここ数年、東京の不動産価格は円安とオリンピック効果で随分値上りした。日本では相変わらず個人投資家の間で不動産投資ブームのようだ。

しかし、筆者の元同僚たちは天井感が出てきたという。実際、その何人かは個人所有の土地やマンションを次々売却して投資の出口モードに入っている。そして筆者に「今度は東南アジアをやろうと思うのだが、バンコクはどうだ?」と聞いてくる。
つまり、デベロッパーだけでなく、不動産投資を専門とする生保や外資系のアセットマネジャー達も日本の不動産に見切りをつけ、東南アジアに目を向けつつあるということだ。日本の不動産市場はオリンピックを待たずに失速するかもしれない。

武器は超低コスト資金

しかし、ここにきて続々と日系デベロッパーがタイに進出してくるようになったのには、もう一つ大きな理由がある。タイは今、金融機関の与信基準が厳しく、デベロッパーが新規プロジェクトを行うための開発ローン金利は6%と高い。

しかし、上場企業は直接金融を通して3%のコストで資金調達できる。この差が非上場の中小デベロッパーのマーケットシェアを縮めている。調査機関AREAによれば、住宅全体で中小デベロッパーのシェアはわずか23%にまで落ち込んだ。

しかし今、大手デベロッパーでも激しい競争に直面していて、その命運を握るのが資金力となっている。いくら上場企業といっても無尽蔵に社債や新株発行で資金調達できない。そこで日系デベロッパーなのである。マイナス金利政策を取る日本の資金調達コストは非常に低い。タイのデベロッパーにしてみれば競争に勝ち抜くために是非とも欲しい低コスト資金なのだ。 中国のデベロッパーもタイ進出を狙っている。

しかし、彼らには超低コスト資金という武器がない。日系デベロッパーがここぞとばかりにタイのデベロッパーとJVを組んでバンコクに進出してきているのは、ビジネス戦略として全く正しいように筆者は思うのだが…。


藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコクコンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。

連絡先:087-481-9709
bkk.condostory@gmail.com

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