ビジネス・経済 2018.04月号

タイの自動車市場のセグメント別動向と構造変化(後編)

タイの自動車市場のセグメント別動向と構造変化(後編)

2015年からのセグメントの変化
~ボデータイプの多様化

2010~15年までのセグメントの大きな変化がエコカーの登場に象徴される小型化志向だとすると、2015年以降のセグメントの大きな変化はボデータイプが従来のセダン、ハッチバック主体からより多様化していることだと言える。都市部の若年層や30~40代のファミリー層はデザインに敏感になっており、世界的なSUVブームの影響で、ホンダのHRVやマツダのCX-5などシティユーズのSUVが、特に女性を中心に人気だ。SUVの比率は従来の10%前後から近年は15%近くまで拡大している。

また、都市部のファミリー層では利便性志向が高まっており、トヨタのシエンタや日産のノートのように、室内空間を広く有効に利用できる小型MPVが市民権を持つに至った。これに引き換え、カローラ・アルティス等のPC-Csegのシェアは低下傾向にあり、PC-CSegからSUVやMPVにシフトしていることが窺える。

D-Segの低下と
高級車による代替

所得の二極化を反映して、最近は高級車の販売が好調である。グラフではPC-Othersに分類されており、2017年には前年比30%増の2万5,000台に到達した。欧州メーカーによると、特にスタートアップといった若年経営者層が好んで欧州高級車を購入しているようだ。欧州メーカーはリース販売(残価設定)を拡大しており、従来より少額の割賦で購入できるようになったことも販売増に貢献している。欧州高級車の販売増大の影響を受けたのが、トヨタ・カムリーやホンダ・アコード等のPC-D-Seg(2,000ccクラスの乗用車)であり、高所得層のSUV志向も相まって、日系メーカーの上級クラスの乗用車のプレゼンスは引き続き低下が予想される。

日系自動車メーカーの課題

以上から今後のタイの市場動向をまとめると、2018~20年までは堅調なピックアップ需要と小型乗用車の回復により、引き続き100万台近くまで伸びることが予想される。その一方で、高い代替需要や新規需要が発生する状況ではなく、市場は成熟化していく。ボデータイプはSUVやMPVなど多様化が進み、高級化志向も高まる。日系自動車メーカーが得意としてきた従来型の量産モデルは通用しなくな可能性があり、市場の変化を先読みしながら、新しいニーズや嗜好を捉え、多様化し成熟化する市場を果敢に攻めて行く、高い商品企画能力が求められている。

(ArayZ5月号に続く)

執筆者:野村総合研究所タイ


マネージング・ダイレクター
岡崎啓一


シニアコンサルタント
山本 肇

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