【連載第49回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

シーポム社編(5)
「派遣社員のバックグラウンド」

(前回までのあらすじ)
〜メイさんの辞意がきっかけで派遣サポートを開始するために、急遽追加採用で2名を派遣で向かわせたのだが、想定外のことにメイさんが辞めないことになった。それでもこれまで出来なかった予算管理などにリソースを活用することで、山雲さんもそのまま派遣を受け入れてくれたが…〜

この先の話を進めるためにも、ここで派遣した2人の背景を説明する必要がある。以前のこのコラムの中で「1月という採用にとっては追い風の時期ということもあって立て続けに2人が決まった」、という状況であったのを思い出して欲しい。その時、緊急対応としてすぐに補充する必要があったことが理由で、派遣先のシーポム社の了承を経た上でだが、給与水準にはある程度目をつぶる必要があった。

そのことが今になってじわじわ効いてくるのである。

採用時期としては追い風だからといって適任と思える人材ばかりが多くなるわけではなく、不適任と思われる人材も同じくらい多くなるのだ。更に言うと適任な人材と思われる人材も売手市場優位のため給与水準も通常より高めに誘導されやすい。≪※1≫
もちろん適任か不適任かは職場環境への順応性や周囲の同僚などとの相性もあるので、実際に採用してみないと分からないことも多い。そこにはある程度目をつぶっても前に進めるしかない。

そんな中、出会った1人がムマさん。マネージャー経験もあるようだし年齢的にも40歳で恐らく幅広い経験をしてきているであろう女性。今回の派遣の主軸に適任だ。≪※2≫

そしてもう1人はラムさんという女性で30歳代の中堅どころ。アシスタントマネージャーとしてムマさんと協力して欲しいところであった。2人ともタイでは特殊な派遣という環境で当社の門をくぐったということもあったし、何よりも早めにシーポム社に投入したい。そんなわけで通常の当社対応給与水準よりも同年齢と同経験からはやや割高感は否めなかったが、そこを気にしだすといつまでも決まりそうもなかったので採用を決定した。

それからほぼ同時期にムマ&ラムコンビでのサポートも始まり、業務はスムーズに流れるようになった…はずだった。 (続く)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

≪※1≫
以前ほど集中的ではなくなった気もするが、やはり12月に賞与を受け取ってジョブホッピングよろしく転職の時期としては1~3月くらいにかけてが多い。特にタイではソンクラーン(旧正月)での長期休みも4月中旬に入ると控えているので、それまでの間に新しい職場を決めて休みに入りたいという気持ちも後押しするのだろう。そしてこれが厄介なのだが、明らかに有能と思われる人材には時期に拠らずどこの会社も欲しいと思うためオファーが集中する。全体の母数が上がってもそういう人の数自体が増えるということでなく、むしろそういった人ほど時期に関係なく仕事も探せるので、人材市場に出て来る絶対数である分子は変わらないこととなる。そうなると市場原理として高めに給与が誘導されやすくなるのだ。特に中間管理職経験者は常に不足がちなので尚更その傾向が高い。分母が増える分希少性も上がってしまうのである。
≪※2≫
まずはレジメから判断するしかないのは日本も一緒だと思うが、タイの場合はより専門色寄りの形で経歴が列記されていることが多い。欧米ほどではないかもしれないが、雇用時の契約で職務内容をある程度具体的に記載することも多く、その範囲内での役務の提供に対して受け取る対価が給与という認識が少なからず根付いてしまっているためと思われる。そんな背景もあって、全体に中間管理職のようなゼネラリスト的な人材が少ない傾向にあり、経歴に前職がマネージャーというだけで目を惹くときもある。もっとも部下なしで役職だけの名ばかりマネージャーみたいなこともあるのでそこは面談で見分ける必要もある。

Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
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事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
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E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/


但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。
本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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