レストラン・生活 2018.02月号

見世物経済を作るアボリジニ (オーストラリア/シドニー)~世界の路上ワーカー~

見世物経済を作るアボリジニ
(オーストラリア/シドニー)

オペラハウスを目指して海沿いを歩いていると、聞いたことのない重低音が遠くの方から聞こえてきた。目を凝らすと、身体中に白いペイントをして日に焼けた男達が、細長い棒を口に当てながら、ブーメランを叩いて音を出していた。先住民アボリジニとの初めての出会いだった。ブーメランを持って西洋人と記念撮影をしている。

細長い棒はディジュリドゥというアボリジニ独特の木の笛で、絵画、楽器、CD、を手売りしていた。

この異次元に迷い込んできたかのような異様な光景に、私は思わず足をとめた。

「この仕事はいつから?」「半年前からだ」「どんなスケジュール?」「週6日出勤で、時間は決まってないよ」「他に仕事はしてる?」「してない」「1日いくらくらい稼ぐの?」「少ない時は1日2〜7ドル、多い時は1日100ドルくらいだな」「なんでこの仕事始めたの?」「アボリジニ文化を広めたくてさ」「お金よりも大切なものってなに?」「アボリジニ文化だよ」「あなたにとって神って?」「“Baiame”だよ」

彼の物怖じしない態度と自分の文化に誇りを持ち、確信を持って仕事に取り組んでいる姿は、カッコよくて美しかった。オーストラリアの豊かな自然と共に仲良く生きてきた原住民アボリジニたちは、今や絶滅の危機に瀕してしまっている程減少しているという。そんな彼らを「見世物」としてしか触れ合えない現実が、ここにはあった。

※通貨は1豪ドル=89円で計算(2018年1月時点)


中野陽介 芸術家。1987年福岡生まれ。07年渡米、Los Angeles City College卒業。数々の映画制作に参加後、芸術に目覚める。12年 渡タイ、バンコクで芸術家とサラリーマンの2足のわらじ生活を送る。16年に1年間で22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。自作の「芸術入門サイト」(art-geijutsu.com)は10万アクセス突破。作品や活動記録は下記サイト参照。
yosukenakano.com

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