ビジネス・経済 2018.02月号

第22回 楽観と悲観、2つに割れた2018年市場予測

第22回 楽観と悲観、2つに割れた2018年市場予測

2018年に入り、不動産市場に関して複数の調査機関から市場予測が出てきているのだが、今年は大きく楽観派と悲観派の2つに割れている。昨年後半から始まったタイ経済の回復で、これまで低迷してきたバンコクのコンドミニアム市場もリバウンドするという楽観派、そして、今後も供給過剰がさらに深刻化し、不動産市場はバブル化するという悲観派の2つだ。

楽観派はDDプロパティやネクサスプロパティだが、彼らは実際に“リバウンド”という言葉を使い、今年の不動産市場を楽観視している。同様の見方をしているところは他にもあったが、その中でもDDプロパティが詳しく解説しているので彼らの主張をまとめてみる。

1. 2018年の不動産市場: 2017年末から消費者支出が増加に転じ始めていて、今年はタイ経済の回復、銀行の与信基準の緩和、マストランジットの新線開通、政府のEECでのインフラ整備などが住宅需要を刺激する。一方、供給面でも2017年に比べてさらに多くの新規プロジェクトがデベロッパーから売り出される。その結果、今年の不動産市場はリバウンドし、再び健全な市場に戻り成長を続ける。

2. 売買市場: タイ経済回復に合わせて2017年後半から不動産売買市場も回復が始まったが、この流れは今年も継続する。しかしながら、それは購買力のあるアッパーミドルクラス以上が購入する、セグメントでいえば都心部や都市近郊のミドルクラスからハイエンドのプロジェクトに限られる。(注:表はネクサスプロパティのエリア別市場予測)

3. 賃貸市場: 2017年はCBDのコンドミニアム賃貸マーケットは需要と供給の両方で拡大し、特に家賃が15,000から70,000バーツまでの物件に人気があった。一方、バンコク都近郊と郊外の賃貸市場はあまりよくなかった。需要が少ない中、過剰な供給が行われたからであるが、現在建設中の新線の工事が進んでくれば郊外の賃貸需要も拡大してくる。

これに対し、悲観的な予測をしているのがAREAやコリアーズであるが、AREAの主張はこうだ。

1. 2017年の予想供給総数はプロジェクトの数自体は2016年より13%少ないものの、戸数と金額でそれぞれ117,112ユニット (8%増)、4,461億バーツ(22%増)となる。これはAREAが調査を開始した1994年以降、最大の年間供給量である。

2. 新規供給プロジェクトの価格でみると、1ユニットの平均価格は2016年が337万バーツであったのが2017年は381万バーツへと13%もの上昇となっている。すなわち、住宅市場では中低所得層向けの廉価な住宅でなく、アッパーミドルから高所得層向けハイグレード住宅が主に供給されているということであり、政府の低所得者向け住宅取得支援策などは不要ともいえる。実際、タイでは住宅は全く不足していないし、販売促進キャンペーンというのは大手デベロッパーが自社の販売在庫を一掃するために行う実質的値引きにすぎない。

3. このような住宅市場の拡大現象は根拠のない不動産ブームであり、やがてはバブルを引き起こす。従って、もしこの不動産ブームが2018年以降も続けば、2019年か20年には不動産バブル崩壊が起こる可能性がある。つまり、今の不動産ブームは継続的成長を最優先する大手デベロッパーが、社債発行や借入で調達した低コスト開発資金を使った一方的な新規供給で作り出したものであり、ある日、この不動産投機はもう儲からないと市場が気づいた時こそ、不動産バブルが崩壊する。

以上、楽観派、悲観派とも2018年は新規物件の供給増を予測しているものの、需要に対する予測が決定的に違うのがわかる。今年の市場予測については、本誌1月号で筆者の思うところを書いたが、さて、どちらの予想が正しかったのかは年末を待たなければならない。


藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコクコンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。

連絡先:087-481-9709
bkk.condostory@gmail.com

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