ビジネス・経済 2017.06月号

時事通信 特派員リポート Vol.18 【ロシア】ロシア、北極圏の軍事力強化 =資源獲得に虎視眈々(モスクワ支局 石井将勝)

ロシアが北極圏の軍事力強化に力を入れている。ロシア国防省は4月、北極海の島に新たに建設した軍基地の画像を公開したほか、5月9日にはモスクワの「赤の広場」で開かれた軍事パレードで北極圏仕様の兵器を初披露した。地球温暖化で海氷面積が減少し、北極海航路の拡大や資源開発の可能性が広がる中、ロシアは軍事力を背景に主導権を握ろうとする姿勢を明確にしている。

兵士が1年半生活可能

北極圏の基地はフランツヨシフ諸島のアレクサンドラ島に建設され、建物の総面積は1万4000平方メートル超。ジムや映画館なども備え、「兵士150人が1年半にわたって生活できる」という。ロシア国旗の色である赤、白、青の塗装を施された近未来的な外観の建物が特徴的で、国防省は「北緯80度以北で世界唯一の大型建造物」とアピールしている。ロシアは北極圏にある他の基地の近代化も加速している。

軍事パレードで披露された北極圏仕様の兵器は防空システム「パンツィリSA」と「トールM2DT」。白を基調とした塗装が施され、シロクマのマークがあしらわれている。国防省によれば、パンツィリSAは機関砲と射程20キロの対空ミサイルを装備。トールM2DTは輸送車両「DT30」を基本とし、オフロードや寒冷地の走行が可能だ。対空ミサイルの射程は15キロとなっている。


旧ソ連の対独戦勝72周年記念軍事パレードで公開された北極圏仕様の車両(9日、EPA=時事)

プーチン大統領は3月29日、メドベージェフ首相やショイグ国防相らとアレクサンドラ島を視察し、国防・情報機関当局者に「ロシアの国益を守るよう」指示した。
ロシアのメディアによれば、ロシア海軍は4月、砕氷機能を持つ多目的艦「イワン・パパーニン」2隻の建造に着手した。全長は110メートルで1.5メートルの氷を砕くことができる。2020年ごろまでに引き渡しが行われる。
ロシアは原子力砕氷船の建造にも注力している。プーチン大統領は5月15日に北京で開いた記者会見で「原子力砕氷船を含む砕氷船団をつくる計画があり、この作業は続くだろう」と述べている。

大国間の競争激化

米地質調査所が08年に公表した資料によれば、北極圏の未発見資源量は石油が900億バレル(世界全体の未発見量の13%)、天然ガスは約47兆立方メートル(同30%)あると推計されている。これらの資源をロシアは虎視眈々(たんたん)と狙っている。
北極圏には米国、ロシア、カナダ、デンマーク、ノルウェーなど、八つの国が領土を持つ。南極に関しては平和利用などを定めた南極条約があるが、北極にはそのような条約はない。各国は国連海洋法条約などが適用されるという立場だが、解釈や運用に意見の相違があり、対立が生じ得る。
また、ロシアが神経をとがらせているのは中国の動向だ。北極の資源に関心を抱く中国は砕氷船も所有しており、日本などとともに13年に「北極評議会」のオブザーバーとなった。最近はたびたび北極圏に調査船を派遣しているほか、今年4月には習近平国家主席がノルウェーやフィンランドを訪問し、首脳会談を行った。北極をめぐる大国の駆け引きは今後も激しくなりそうだ。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。
(2017年5月25日記事)

 

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