ビジネス・経済 2017.11月号

時事通信 特派員リポート Vol.23【マレーシア】次期総選挙、野党分裂のまま突入か=与党利する展開にー (クアラルンプール支店 中村卓朗)



マレーシアの次期総選挙が2018年半ばまでに行われる。13年の前回選挙は、与党連合・国民戦線(BN)が過半数の議席を維持したものの、得票数では当時の野党連合がBNを初めて上回った。今回は主要野党の全マレーシア・イスラム党(PAS)が野党連合に参加せず、単独で選挙に臨む構えを見せている。現時点では、野党分裂でナジブ政権の批判票が割れ、1957年に英国から独立後、一貫して政権を担っているBNが有利な展開となっている。

野党連合にマハティール氏参加

13年の総選挙では、連邦議会下院222議席のうち、ナジブ首相が総裁を務める最大与党の統一マレー国民組織(UMNO)などが参加するBNが133議席を獲得。改選前から2議席減らしたものの、過半数を確保し、政権を維持した。

これに対し、当時の野党連合・人民同盟(PR)は改選前の75議席から89議席に躍進。総得票数では全体の52%を占め、47%のBNよりも国民の支持を得た。

人民同盟にはPASのほか、アンワル元副首相を指導者に置く人民正義党(PKR)、中華系の民主行動党(DAP)が参加していた。しかし、PASがイスラム刑法に基づく刑罰の実施を目指す動きを強めた結果、反対するDAPとの関係が悪化。15年に人民同盟は解消した。

その後、PASの一部議員が新党パーティー・アマナ・ネガラ(Amanah)を創設。PKR、DAPとともに新たな野党連合・希望連盟(PH)を組織した。
与党サイドでは、ナジブ首相の不透明な政治資金疑惑などを批判していたマハティール元首相やムヒディン前副首相らが16年にUMNOを離党。マレーシア統一ブリプミ党(PPBM)を結成し、希望連盟に合流した。

地元メディアによると、マハティール氏は「全ての野党が(共闘へ)合意することが重要だ」と訴え、PASとの選挙協力を模索した。しかし、PASは「希望連盟は信用できない」(アブドゥル・ハディ・アワン総裁)と連携を拒否。主要野党が一枚岩になって政権交代を目指す構図にはなっていない。

野党連合の枠組みを見ると、PASが離脱した代わりにマハティール氏らの新党PPBMとPASから分離したAmanahが加わった。下院の現有勢力は、PASが14議席なのに対し、PPBMはムヒディン前副首相の1議席のみ。Amanahも6議席にとどまり、PASが抜けた影響は大きい。

PPBMは、今も国民の人気が高いマハティール氏が政党の看板だが、91歳という高齢が不安材料。国会議員を引退してからだいぶ経過しており、「マハティール」ブランドがかつてのような求心力を発揮するかは未知数だ。

アンワル元副首相は立候補できず

また、野党指導者のアンワル氏は15年、同性愛行為の罪で連邦裁判所(最高裁)から禁錮5年の有罪判決を受け、服役している。次期総選挙には立候補できず、野党連合にとってはマイナス要因だ。

野党の共闘が不調に終わっている現状では、選挙戦は与党BNに対し、希望連盟とPASの野党2陣営が挑む三つどもえの争いになる公算が大きい。BNと希望連盟の一騎打ちとなる選挙区では、「PASの支持者はBNに投票する可能性がある」とみる政治アナリストもいる。

一方、ナジブ政権は前回選挙後、政府系ファンド「1MDB」の巨額負債問題やナジブ氏の不透明な政治資金疑惑が発覚。首都クアラルンプールでは、首相退陣などを求める大規模デモが2年連続で行われた。ナジブ氏への国民の不信が、与党の選挙戦にどの程度影響してくるかは読み切れない面もある。

ただ、野党の足並みの乱れに加え、17年のマレーシア経済は予想を上回る成長を遂げており、現政権の経済運営に表立った批判は出ていない。次期総選挙でのBNの優位性は揺るがない情勢だ。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。(2017年10月18日記事)

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