時事通信 特派員リポート

【ベトナム】市場規模、内需に着目=日本企業のベトナム展開 (ハノイ支局 冨田共和)

ベトナムへの外国企業による最近の投資案件を見ると、LGディスプレーやサムスン・ディスプレーのパネル工場、LGインフォテックの携帯電話用パネル工場など韓国勢が上位に並ぶ。累積投資額でも韓国が独走し、かつて首位だった日本は大きく水をあけられた。ただ、見方を変えれば、ベトナムを「安い人件費を生かした輸出拠点」でなく「東南アジア有数の消費市場」と考え、内需に着目する日本企業が増えているという別の姿が浮かんでくる。

さらなる成長に期待

日本貿易振興機構(ジェトロ)と国際協力銀行(JBIC)がそれぞれ日本企業を対象に実施した調査の結果からも、そうした傾向は明らかだ。
ジェトロ・ハノイ事務所によると、ベトナムに進出した日系企業の3分の2が事業を拡大する方針を示し、その理由として最も多かったのは「売り上げの増加」、続いて「成長性、潜在力の高さ」だった。ベトナム市場は既に拡大しつつあり、さらに「これから成長する可能性が大きいと(企業は)みている」(川田敦相ハノイ事務所長)ことを印象付けた。
一方、JBICの調査では、海外現地法人を3社以上持つ製造業が考える今後の有望国・地域でベトナムは4位となり、前年より順位を一つ上げた。有望と答えた企業の4分の3が、その理由を「現地マーケットの今後の成長性」としており、ここでも将来への期待が見て取れる。
ベトナムの人口は9000万人超で、東南アジア諸国連合 (ASEAN)加盟国ではインドネシア、フィリピンに次ぎ3番目。経済・社会は発展の歩みを止めず、都市開発や生活の変化が急速に進む。法制度の運用や税務手続きの不透明さをはじめ、投資・ビジネス環境の障害が依然残るものの、消費市場として無視できない存在となっている。


成長著しいハノイの中心街

ダイキンが象徴

大企業は一段落、主流は中堅・中小企業に移ったー。こう評されてきた日本企業のベトナム進出にあって、「久々の大型案件」(経済団体幹部)と言われたのがダイキン工業だ。同社は昨年夏、ハノイ近郊に住宅用エアコン工場を建設し、2018年4月に操業を開始する計画を発表した。投資額100億円を見込む。

ダイキンの主眼は、成長に伴う所得向上で「アジア最大級の空調市場」(同社説明資料)となったベトナム国内向けの生産にある。ベトナムから全世界へ携帯電話やIT製品を送り出すことを念頭に置くサムスンやLGと比較すると、投資の性格は様相を異にする。
中間層が確実に増加していくベトナムでは、この先「中間層のニーズに見合う商品の供給が一つのカギ」(ジェトロ関係者)だ。ダイキンがエアコンの現地生産に乗り出すのは、生活にゆとりが出てきた人たちの消費行動の変化を捉えた象徴的事例と言える。

日本企業のタイやインドネシアでの事業展開、さらにASEAN経済共同体(AEC)発足に伴う関税撤廃・削減などを考慮した場合、「大規模工場をベトナムに新しく建てる可能性は大きくない」(日本の経済界関係者)のが実情だ。半面、ベトナムの消費者をにらんだ高付加価値製品の導入は、一段と活発になるとみて間違いないだろう。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。
(2017年2月21日記事)

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