ビジネス・経済 2017.10月号

時事通信 特派員リポート Vol.22【カンボジア】カンボジアのフン・セン政権、強まる独裁色=野党党首逮捕、メディア弾圧 (バンコク支局 花田義久)

カンボジアのフン・セン政権の独裁色が強まっている。最大野党カンボジア救国党のケム・ソカ党首が米国と共謀して政権の転覆を図ろうとしたとして、国家反逆容疑で逮捕されたほか、政府に批判的な報道を続けてきたメディアが相次いで活動停止に追い込まれた。来年7月に予定される総選挙をにらんだ動きとみられ、内外で懸念が深まっている。

あと10年、首相続投

「いつ辞めるのが一番いいのか、自問してきたが、一部の者による反逆行為を受け、あと10年仕事を続けることを決断した」。フン・セン首相はケム・ソカ氏が逮捕された3日後の9月6日、首都プノンペン郊外の工業団地で労働者を前に行った演説で、首相続投の意向を表明した。

しかし、ケム・ソカ氏逮捕の根拠とされているのは、同氏が2013年に行った講演で、政権交代に向けた戦略をめぐり米国人の専門家らから助言を受けていると説明した発言。このため、「政治的動機に基づく訴追」(国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ)とみられている。

米国務省が「重大な懸念」を示したほか、欧州連合(EU)もケム・ソカ氏の即時釈放を求める声明を発表。ゼイド国連人権高等弁務官は「国会議員の不逮捕特権の尊重を含め、適正な手続きの保障が尊重されずに逮捕が行われたように見える」とフン・セン政権を批判した。

しかし、フン・セン首相は11日、大学で行った演説で「一部の外国大使館はまるでカンボジアの親のように振る舞っている」と不快感を表明。さらに、救国党に対し、「国家反逆行為をした者を擁護し続けるなら、党もまた同様だということを意味する」として、党首の交代に応じない場合、解党に直面することになると警告した。

中国依存、加速か

一方、米国のハイト駐カンボジア大使は12日の記者会見でケム・ソカ氏の事件に関連し、米国の関与を裏付ける「重大あるいは確実な証拠は全くない」と反論。「カンボジアの国政選挙がきょう実施されたとしたら、自由かつ公正で、カンボジア国民の意思を反映したものと認定する国際監視員はいないだろう」と強い懸念を表明した。

だが、フン・セン首相は対米批判をさらにエスカレートさせ、14日、親政府ニュースサイト「フレッシュ・ニュース」のインタビューで、ベトナム戦争中の行方不明米兵のカンボジア領内での捜索活動について、「米国との協力を停止する」と明言。翌15日には、米国からカンボジアに派遣されているボランティア組織「平和部隊」の引き揚げを求めた。

こうした中、フン・セン政権の腐敗を追及してきた英字紙カンボジア・デーリーが4日の発行を最後に廃刊に追い込まれた。税務当局から630万ドルの税金支払いを請求され、発行継続を断念した。また、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)も12日、政権の圧力で「ジャーナリストとしての良心を守りながら支局を開き続けるのは不可能になった」として、プノンペン支局の閉鎖を発表した。

フン・セン政権がなりふり構わぬ動きに打って出たのは、6月に実施された地方選挙で救国党が躍進し、来年の総選挙での政権交代が現実味を帯びてきたからだ。
カンボジアにとって最大の支援国となっている中国の存在も大きい。ケム・ソカ氏逮捕翌日の記者会見で中国外務省の耿爽・副報道局長は、「国家の安全と安定を維持するカンボジア政府の努力」を支持すると述べ、すぐに政権を支える方針を明らかにした。

救国党のムー・ソクフア副党首は米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、「フン・セン政権は西側のパートナーを遠ざけるリスクを負ってでも、あらゆる形態の反対を弾圧しようと思っているのだろう。近年、中国がカンボジアに惜しみなく軍事援助と投資を供与しているからだ」と指摘した。フン・セン政権は中国への依存を一層強める展開になりそうだ。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。(2017年9月20日記事)

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