時事通信 特派員リポート

【香港】深セン・香港間の相互株式取引に高まる期待 =12月にもスタート(香港支局 小川耕一)

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中国の深セン証券取引所と香港証券取引所による越境相互株式取引が12月にも始まる見通しとなった。香港では株式市場の活性化につながると期待感が高まっている。
李克強首相は8月16日、国務院(内閣)が深セン・香港間の相互株式取引を承認したことを明らかにした。金融面で中国本土と香港の協力関係が深まり、国際金融センターとしての香港の地位向上に寄与すると強調した。
2014年11月の上海・香港間の相互取引開始に続き、深セン・香港間の相互取引も実施は時間の問題とみられていたが、15年夏の上海市場の株価急落とその後の混乱などを受けて先送りされた。李首相は今年3月の政府活動報告で年内実施の方針を表明。準備に3〜4カ月かかることを考えると、8月が発表のタイムリミットとされ、すべり込みで間に合わせた形だ。

香港株の取引可能銘柄数は1.3倍に

本土投資家の香港上場株への投資意欲は底堅い。これに応えるべく、上海・香港間に設けていた総投資限度額(買越額の上限)は深セン・香港間では設定せず(上海・香港間は発表に合わせて撤廃)、売買対象も従来のハンセン大型株・中型株指数の構成銘柄と香港H株(上海A株)に加え、新たに時価総額50億香港ドル(約650億円)以上のハンセン総合小型株指数の構成銘柄にも門戸が開かれる。取引可能銘柄数は417となり、上海・香港間(318)の1.3倍に拡大する。
17日付の香港紙・香港経済日報によれば、(1)証券会社(2)ハンセン小型株指数の構成銘柄(3)A株・H株の価格差の大きい企業(4)ブランド力のある企業(5)ハイテク企業-の5分野が有望とされる。クレディ・スイスは本土の銀行や不動産などの高配当銘柄が物色されると予想した。
香港証取を運営するHKExの李小加最高経営責任者(CEO)は、来年は取引対象に上場投資信託(ETF)を加えたいと強調。債券やデリバティブ(金融派生商品)などの相互取引も目指すとしている。

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香港証取を運営するHKExの旗(EPA=時事)

深センはハイテク株狙いか

一方、深セン市場への効果は微妙だ。香港や海外投資家の上海株への投資意欲はそれほど高くなく、深セン株も急激な盛り上がりは期待できないとみられる。本土経済の減速見通しや元の先安観に加え、個人投資家中心で投機的な側面の強い本土市場への警戒感も根強い。深セン市場は上海市場よりも値動きが荒い上、株価急落時などに企業側の希望で取引停止を続けることが可能なことから、「売りたい時に売れない」との懸念がくすぶる。
ただ、金融や製造業など大規模国有企業が主体の上海株に対し、深セン株はハイテクなど成長余力のある中小企業が多く、投資妙味は高い。香港紙・明報によれば、上海市場は金融(41%)と製造業(19%)で全体の6割を占める一方、深セン市場はIT(23%)がトップで、一般消費財(17%)、金融(15%)、製造業(14%)と続く。株価収益率(PER)は42倍と、上海の15倍、香港の10倍を大きく上回るものの、UBS系の瑞銀証券のストラテジストは「年20〜30%の増益率を上げる企業なら、50倍でも高くない」と分析している。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。(2016年8月25日記事)

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