ビジネス・経済 2017.09月号

時事通信 特派員リポート Vol.21【台湾】台湾の蔡政権、断交ドミノ危惧=パナマショックに揺れる(台北支局 大月克巳)


中米パナマが6月、台湾と断交し、中国と国交を樹立した。昨年5月に台湾独立志向の民進党・蔡英文政権が発足してから約1年で、西アフリカの島国サントメ・プリンシペに続き、台湾との関係を清算したことになる。他の複数の友好国も中国との国交樹立を模索しているとの情報があり、蔡政権は断交ドミノの発生を危惧している。

台北の総統府で会見する蔡英文総統=6月13日 (AFP=時事)

「別格」パナマ

台湾と外交関係のある国はパナマの断交で20カ国に減少した。中国は「一つの中国」原則の受け入れを拒む蔡政権に対する圧力を強めており、今年5月には8年続いた台湾の世界保健機関(WHO)総会へのオブザーバー参加を阻止している。サントメ・プリンシペやパナマとの断交も蔡政権を外交的に孤立させる中国の長期戦略の一環とみられる。
台湾が外交関係を持つ国はアフリカ、中南米、南太平洋の小国が大半だ。その中で、清朝から引き継いだ100年以上の外交関係を持ち、パナマ運河という要衝を抱えるパナマは、欧州のバチカンと並ぶ「別格」の存在だった。蔡総統は昨年6月、総統就任後初の外遊先にパナマを選んでいる。それだけにパナマの断交はこれまでの他国のケースと異なり、台湾社会に大きな衝撃を与えた。

最後はバチカンと数カ国?

2008年に発足した国民党の馬英九政権は対中融和路線を推進。中国と外交関係を競わない「外交休兵」を掲げた。13年11月に西アフリカのガンビアと断交したが、2期8年間で他に台湾と断交する国は現れなかった。そのガンビアも中国との国交樹立は蔡政権発足を目前に控えた16年3月まで時間を置いている。

外交筋によると、馬政権時代もパナマを含む複数の国が中国に国交樹立を働き掛けたが、「北京当局が馬政権に配慮して首を縦に振らなかった」という。ところが、昨年1月の総統選で蔡氏が当選し、同5月の新政権発足が確定した後は、ガンビア、サントメ・プリンシペ、パナマと雪崩を打ったように中国と国交を樹立している。

台湾はこれまで外交関係を持つ国が中国に寝返えることがないよう、インフラ整備など巨額の援助を行ってきた。しかし、中国の経済大国化に伴い、多くの国は、使途が限定された援助よりも、中国からの投資を呼び込み、貿易取引を増やした方がより大きな利益を生むことに気づいた。「爆買い」の中国人観光客が押し寄せれば、人口数万人の小国の経済は一気に潤う。政界関係者は「中国との援助合戦をやっても、もはや勝ち目はない」と認める。

蔡政権は「挑発せず、予想外のことをせず、対等の交流の道を探る」を対中政策に掲げ、低姿勢を貫いて中国との対立を避けてきた。しかし、台湾がいくら「善意」を示したところで、中国の外交攻勢に変化は見えず、今後も台湾友好国を切り崩していくとみられる。
さらに台湾の友好国自体が中国との国交樹立を望んでいるとなれば、台湾につなぎとめる手段は限られ、状況はますます厳しくなる。外交関係者は「最終的にバチカンと2、3カ国にまで減ってしまう恐れがある」という。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。(2017年8月7日記事)

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