ビジネス・経済 2018.02月号

【台湾】台湾も40年に「脱ガソリン車」 =エコカー普及進まず、実現には課題山積(台北支局 佐々木 宏)

台湾政府は、大気汚染対策に向けた行動計画の一環として、ガソリン車やディーゼル車の販売を2040年に禁止し、電気自動車(EV)などの電動車に全面的に移行する方針を打ち出した。

年間の新車販売台数が40万台前後に過ぎない台湾では、自動車産業は花形とされる半導体やIT産業に比べ、軽視されがちで、政府による産業振興策は後手に回り、ハイブリッド車(HV)やEVといったエコカーの普及率はただでさえ低い。ロードマップ作りもこれからで、実現には課題が山積している。

平均「車齢」は13年

冬場の台湾は、中国大陸から微小粒子状物質PM 2・5が季節風で運ばれ、大気汚染が悪化する。重化学工業の盛んな高雄や石炭火力発電所が集中する台中は特に深刻で、街中がスモッグで覆われる「紅害」が今年も発生し、市民の不満が高まった。

両市では17年12月17日、大気汚染の改善を求めるデモが行われ、最大野党・国民党などが政府批判を展開。18年の統一地方選への影響を懸念した行政院(内閣)は、対策強化を迫られる形で同21日、行動計画を発表した。

計画によると、30年に公用車やバスを優先的に電動化し、40年からは販売する一般個人用向け乗用車も電動車のみとする。庶民の足として広く普及する二輪車は四輪車に先駆け、35年に全面的に電動化する。

環境保護署(環境省に相当)は電動車戦略に関し、「EU(欧州連合)に歩調を合わせる」としており、電動車に日本勢が得意なHVを加えるかどうかなど、詳細については「EUの動きに加え、関係企業や当局とも協議して決める」と述べるにとどまる。ただ、基本的にはHVを排除する方向で検討が進むものとみられる。

台湾のエコカー普及は遅れている。登録済みの自動車(バスや貨物車も含む)は、17年11月末時点で計約794万台で、このうちHVは約8万8000台、EVは約1470台にすぎない。

政府は、補助金や減税でエコカーへの買換を促してきたが、高い関税などを背景に新車価格が高い一方、ガソリン価格を含めた保有コストが比較的安いため、買換は進んでいない。燃費や環境性能の悪い古い車を対象とした買換も促進しているが、最初の登録からの経過年数である「車齢」は平均13年と、旧型のガソリン車やディーゼル車が幅をきかせている。

ロードマップはこれから

エコカー普及の遅れは主に高価なためだが、EVについては、充電施設などインフラ設置が進まず、整備の見通しが立っていないことも要因だ。現時点で台湾全土の充電スタンド・ステーションは計816カ所にとどまる。40年に向けた充電施設の設置目標について、所管の経済部(経済省)工業局は「まだ決めていない」としている。

日系自動車メーカーの現地法人幹部は、台湾政府の電動化計画について、「環境対応に協力しなければならないことは理解しているが、政府がどのようなロードマップを描いているのか分からない」と苦言を呈す。蔡英文政権は、25年までの脱原発を目指しているが、電力の安定供給も不安要素の一つだ。

新車購入コストが高い一方、保有コストが安い現状では、電動車への移行は進まず、計画は絵に描いた餅になりかねない。インフラ整備に加え、関連税制を含めた抜本的な見直しを迫られそうだ。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。(2018年1月5日記事)

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