ビジネス・経済 2018.03月号

【ベトナム】「遅々と進む」国有企業改革=政情絡み、不透明感も(ハノイ支局 冨田共和)

ベトナム政府が、経済の重要課題である国有企業改革への取り組みを本格化させている。昨年12月のビール最大手サイゴンビール・アルコール飲料総公社(サベコ)の政府保有株売却にキリンホールディングスなどが関心を示したことで、日本でもベトナムの動きが注目されるようになった。ただ、政治情勢も絡んで先行き不透明感が拭えず、改革の歩みは「遅々として進む」(日越関係筋)可能性が否定できない。

特別委員会を設置

ベトナムはこのほど「国家資本管理委員会(特別委員会)」を設置し、グエン・ホアン・アイン前カオバン省共産党書記を委員長とする人事を決めた。省庁・機関、自治体の所管が混在する体制を改め、迅速かつ適切に国有企業改革を推進するのが狙いだ。委員会は、政府の投資機関である国家資本投資公社(SCIC)を含む国有企業30社を管理下に置き、その民営化や経営効率化などに取り組むという。

報道によれば、委員会の機構や機能、権限は第2四半期に固まる見通し。改革を一元的に主導する組織の発足について、日系金融機関幹部は「ベトナム政府の真剣度の表れ」と受け止める。

環太平洋連携協定(TPP)署名国の一つであるベトナムは、グローバル経済に対応した競争力強化が不可欠。また、都市鉄道や道路、港湾など相次ぐ大型インフラ事業による公的債務の増加を受けて、国有企業の株式売却を通じた国家収入の上積みも急務となっている。

グエン・スアン・フック首相らは、日本を含む外国の政府関係者や経済団体、企業幹部に「ベトナム企業への投資を検討してほしい」と繰り返し要請。外国からの資本と技術、経営ノウハウを改革のけん引役にしようと躍起だ。

「後難」恐れ、消極姿勢

一方、現状を見ると実務レベルでは「手続きが動かず、省庁の担当者との面会も難しくなった」(外国企業幹部)との声が聞こえてくる。フック首相やブオン・ディン・フエ副首相の掛け声とは裏腹に停滞感が漂い、いら立ちや不満を隠さない外国企業関係者も目立つ。

ベトナムの政治事情に詳しい消息筋は、その背景を「上層部の政治抗争が影を落としている」と指摘する。具体的には、党の最高幹部である政治局員を務めたディン・ラ・タン氏が、かつて会長だった石油・ガス最大手ペトロベトナムグループと傘下企業の巨額損失の責任を問われて昨年12月、逮捕・起訴されたことだ。

タン氏は、経済成長を重視したグエン・タン・ズン前首相に近く、保守的なグエン・フー・チョン書記長と対立関係にあったとみられている。前出の消息筋は、党内で実権を握るチョン書記長らが、過去の経営判断の誤りを材料にタン氏を排除したと解説している。
タン氏が会長の椅子に座っていたのは2006~11年。昔の話を蒸し返されて責任を厳しく追及されるとなれば、「『後難』を恐れて保身を図り、消極的になる」(日越関係筋)のが当局者の心理だろう。

特別委員会の始動を機に、国有企業改革をためらう雰囲気を一変できるかどうかという点も見極める必要がありそうだ。

テト攻勢50周年記念式典出席のため、ホーチミン市に到着したグエン・フー・チョン書記長(中央)=1月31日(AFP=時事)

※この記事は時事通信社の提供によるものです。(2018年2月13日記事)

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