【連載】LAMTIP PARTNERSの簡単！タイでの“かいけい”　

VISA関連申請資料の大部分を占めるのは、会計関連資料

会計とVISAおよび労働許可証の取得は非常に密接な関係にあります。VISA関連の申請資料の大部分を占めているのは、会計関連資料と言ってもよいでしょう。
VISAおよび労働許可証の申請資料を大きく分けますと

①申請者個人の情報（パスポートの写しや氏名住所、給与額など）
②申請者が属する法人の情報（謄本や地図および労働風景の写真）
③会計関連資料

となります（実際はその他提出する資料もあります）。
①②については申請時、所定様式の申請書に記載（数枚程度）すればよく、特に煩雑な作業はありません。ただし③については、VISAおよび労働許可証の申請に対し、要求されている内容になっている必要があります。

申請に必要な資料一覧とチェックポイント

まず、会計関連資料として必要なものには下記書類があります。

Ａ．法人の決算書及び法人税確定申告書（PND・50）
Ｂ．毎月の給与所得に関連する申告書（PND・1）
Ｃ．毎月のVAT申告書（PP・30及びPP・36）
Ｄ．申請者本人の確定申告書（PND・91もしくPND・90）
Ｅ．毎月の社会保険の報告書（SPS・1-10）

Ａについては、明確な理由がなく損失が続いており、利益の見通しがたたない場合（新設法人で初期投資があり、設立後数年は損失があるなど理由が明らかな場合は除く）は、スムーズに申請がいかない場合があります。
いつまでも赤字が続く会社をタイで経営する意味があるのか？　VISAおよび労働許可証を取得するためだけに存続させているのではないかということです。
Ｂについては、申請時直前３ヵ月分の申告書にて、申請者本人の給与額を毎月５万バーツ以上で申告しているか、また、その法人がVISAおよび労働許可証の取得などに許可申請している外国人１名につき、タイ人４名以上の給与報告を行っているか。
さらにその給与額は、タイ人の最低賃金である9,000バーツを超えているかがチェックされます。
Ｃについては、申請時直税３ヵ月分をきちんと申告納税しているかを確認します。
Ｄについては、正しく申告納税しているかを確認します。Ｅについては、Ｂ同様です（ただし、申請者がサイン権者の場合、社会保険の登録はしませんので、その場合は申請者本人給与のチェックはありません）

申請には余裕をもったスケジュール調整が必要

これらの書類については、税務署および社会保険事務所から申告証明書なるものが必要で、単なるコピーでは受け付けてくれません。申請時前にきちんと用意して証明書をもらう準備が必要ですが、証明書の発行には数日かかります。また、毎月の税務申告書には期限が定められています（PND１は７日、PP30は15日）。さらに、その期限を過ぎれば申請書類も最新なものが必要となり、また新たに証明書が必要となります。VISA申請には申請者の本人が移民局に行く必要がありますので、VISA期限も含め、総合的なスケジュール調整が必要です。
意外とタイトなスケジュールで行われるため、すべてがスムーズにいかないとVISAおよび労働許可証の申請では問題となってしまいます。トラブルのあった企業は、会計や会社の管理体制に何らかの問題があることが多いのではとの印象を持たれてしまう恐れもあります。
業者に依頼した場合、業者としてはVISA労働許可証の申請関連を問題なく通すことが目的となるので、時折、申請基準を満たしていない給与申告書や社会保険の報告書を修正せざるを得ない場合があります。そうなってしまいますと、実態と異なり会計上、問題となりますので、注意が必要です（通常は会計処理時に発覚し、何らかの形で会計を調整することになります）。

今回の連載を持ちまして、本連載は最終回となります。連載を読んで見てくださった読者の方々へ、深く御礼申し上げます。

文 ： 岩倉弘貴
Managing Director