【連載第14回】但野和博のコンサルコラム サポート実録記“タイの経理現場より”

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ウイサー社編(1)「会計会社でVISA取得!?」

~はじめに~
最後には何とかなった。というよりも何とかしたと言ったほうが近い表現だろう。達成感ではなく安堵感。クライアントからすればできて当たり前と思われているのだが、難易度が年々上がっていく業務、それがVISA/WP(ビザ・ワークパーミット)の申請代行業務である。この業務を引き受けてからというもの、無事取得に至った時の気持ちは最近こんな調子だ。
時に自分がビザ専門業者になったような錯覚すら起こす。申請代行業務は会計サービス業として本業ではないものの、それもこれも結局のところ準備書類として、会社の月次申告書などが必要になってくることから、クライアントにとってもその手の煩わしい連携が軽減されるのである。当社で会計を受けているクライアントについては、当社で全て完結したほうが喜ばれるのだ。(※)
そこには会計事業だけでは遭遇できないさらに深淵な人間模様が広がっており、十人十色、百人百様なドラマが起こっている。
今回はそんなドラマの一端をいつものようにストーリー仕立てにてお届けするのだが、内容的に濃かった、これまでの複数の事例を組み合わせて皆さんにご案内したい。

「えっ、転貸物件だったんですか?しかもオーナーさんとはほとんど面識がないということでしょうか?」
日本で飲食店を営む東さんはこの度、タイでも飲食店をオープンすることになった。お店自体は慌ただしくもこの数ヵ月間で無事にオープンを迎えたものの、日本からスカウトした若い店長のWPはまだ取得前で、入国ビザの更新もこれからだ。
「はい、何でも間に入ってもらった日系の代行業者任せで決めてしまったものですから…」と東さんはバツが悪そうにそう答えた。
この飲食店運営会社ウイサー社はタイ企業との合弁会社で、サイン権は代表者であるタイ人、日本人の両方が持っているが、実際の運営は日本人主体で切り盛りしている。この案件を紹介してくれた森平さんとの面識は長くはなく、当社の日本人パートナーとの付き合いが長い友人で無下にはできない。
しかし、難易度としてはVISA専門業者でも恐らく受けたくはないであろう前提条件のレパートリー満載だった。この時は男気で思わず受けてしまったが、受けたからには必ず成果で報いるのが勤めでありながらも、その後、何度心折れそうになったことであろう。そう、この時は知るよしはなかった。その先に立ちはだかる数々の難壁を……。(次号に続く)
※クライアント様の匿名を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容変更等、脚色部分があります。
(※)
下記のWP取得時における必要書類リスト(当社作成)でも分かるとおり、月次税務申告書であるPP30(付加価値税)、PND1(個人所得税)や社会保険関係書類を始め決算書類一式が必要となることもあり、これら経理関係で括られる書類とは切っても離せない関係にある。
VISAにおいても同様で書類要件としてさらに追加条件が課せられるのだが、これはまた今後のストーリーの中で登場する予定だ。
【申請書類】
1. 申請書(TT1)=職務内容、日本の住所、過去WP所持履歴の有無など
2. 委任状=代表の方より当社に手続き代行を委任していただくためのもの
3.代表者のパスポートおよびWPコピー=写真のあるページをコピーし本人署名。WPについては内容記載のページ全てをコピーし署名
【本人事前準備書類】
4. パスポート原本およびコピー(本人分)=写真・ビザ・入国スタンプのあるページをコピーした全ページに本人署名
5. 健康診断書=WP指定項目を満たす必要があるので日本で受けたものはそのまま使え
ません
6. 最終学歴の英文卒業証明書=日本で取得するか、日本語で取得した場合は大使館にて英訳証明が必要となります
7. 英文職務経歴書もしくは履歴書=上記1.申請書の中にて記載必要事項になります。当社で必要箇所転記
8. 写真(3×4cm)3枚=バンコク都内の写真現像店などで入手。通常は背景が青味がかった色になります
【会社側事前準備書類】
9. 会社組織図=なければ簡単なもので良いので作成ください
10. 株主名簿(BOJ5)コピー=6ヵ月以内のもの
11. 登記関係書類一式コピー=登記証書、基本定款、会社目的、登記事項証明書一式(6ヵ月以内のもの)
12. 税務関係書類一式コピー=PP30(直近3ヵ月分)、PND1(直近1ヵ月分)、PP01(事業内容届)
13. 監査済財務諸表コピー=決算が1期でも締まっていればタイミングによっては必要となります
14. 社会保険関係書類一式コピー=社会保険加入者証、社会保険料納付領収書(直近1ヵ月分)…タイ人4名に対して日本人1名前提
15. その他許可書類コピー=酒販売免許、工場認可証、旅行業免許など免許に該当するものがある場合に必要となります

 

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、
顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan
http://aporter.co.th/

 

tadano
但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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