【連載第34回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

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ラカン社編(第5回) 「そして定期的なサポートに」

~現地MD歴はや10年の空川さん。本社経理サイドからの要求が増えてきたので、営業や統括業務に集中できるようにと弊社で財務諸表レビューを受けることとなった。毎月の本社報告での内容分析など、実務フォローも継続的にサポートすることになり…~

会計事務所の継続的なサポートとはどんなものか。通常の会計記帳業務と言えば、記帳して財務諸表を作成、それを報告する一連の業務などと言えば理解しやすいだろう。

今回のラカン社の場合、会計記帳業務は進出時以来ずっと依頼している別の会計事務所があり、その変更までは考 えていない。しかも記帳自体もほぼ内製化されている。となると弊社の出番は、最も分かりやすく成果としても説明しやすい、財務諸表のレビュー報告となる(※1)。

内製化している会社であれば、財務諸表のレビューも内製化していることがあるのだが、今回のように必要とされるケースもあるのだ。

営業や技術の人員は手厚くても、現地法人のバックオフィス専業要員まで駐在員として送り込めるのは大企業レベルに限られる。「そもそも、財務諸表の正しい読み方に自信がないんです」といった声が日本人責任者に多いのは最もなことなのだ。

そして始まった、空川さんへの財務諸表レビュー報告。
「現預金残高が減っている理由ですが、在庫回転率が下がったことからも…」。
「流動比率というのは一般的にはこのくらいの水準ですが、御社の場合は…」。
「今月の粗利益が前月より2ポイント下がっているのは、粗利益率の高い商品が前月よりも下がったからで…」。

このとき、財務諸表上の代表的な指標などは、ラカン社の業態や規模に合ったものを採用し、それぞれの指標の表す意味はもちろん、内容についての詳細を毎月ラカン社から提出される月次財務諸表から読み取ってレポートした。この時、ただレポートを作成して提出するだけでは不十分だ。空川さんには必ず毎月恐縮ながら、事務所までご足労いただいてその場で対面での案内を行う(※2)。

こうして、月次財務諸表読み方レッスンとも言うべき、月次財務諸表のレビュー案内は始まった。末永くサポートしていくつもりだったのだが…。 (次回、ラカン社編最終回)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

(※1)
対応事務所にもよるが、サポート内容を柔軟に対応している会計事務所は多い。弊社の場合、サービスメニューをクライアントの規模や業務内容、スタッフレベル、委託報酬予算のほか、将来的に内製化するかしないかなどを切り出して、柔軟に組み合わせている。
ラカン社は基本的な記帳は内製化済みで、在庫処理などの月次クロージング記帳を部分的に別の会計事務所に委託していた。ローカル会計事務所で日本語でのきめ細かい丁寧な案内は不十分ということで、成果物である月次財務諸表に対してレビューし、レポートとして具体的に噛み砕いて内容を補完してほしい、というのが今回の弊社の役目である。
このほか、月次税務処理は既に内部スタッフで対応できているが、個人所得税の源泉計算処理など給与まわりだけはプロパースタッフで対応可能であっても、各スタッフの給与額の秘匿性を優先して外部委託する事例も多い。

(※2)
財務諸表のレビューと聞くと身構えてしまう人も多いとは思う。また、一般的には収支を反映するPL(損益計算書)だけ分かっていれば十分と考える人も多いのだが、財産状態を反映するBS(貸借対照表)の理解も、会社を預かる責任者として怠ることはできない。
といっても、責任者として最低限把握しておくべきことは実は身構えるほどのものでもなく、通常の営業活動で避けて通れない掛売上の回収状況や本社からの借り入れ、仕入先への支払いタイミングといった日常的なものを把握しておくことが中心となる。
少し突っ込んだところで言うと、現預金の増加要因を在庫増減や売上増減と絡めた掛金増減、支払債務の増減といったところで、営業活動を指揮している立場の人であれば必ず理解できる内容なので、毎月少しでも目を通してほしい。

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke), Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、 顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表:日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/

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但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。 本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心 に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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