【連載第44回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

事例別に紹介する新シリーズ!
個人所得税編 (9)「レッグ社の場合(後編)」

~タイの個人所得税に起因する処理の件で相談にいらしたレッグ社大丘さん。追徴課税を避けるため、今後、帰任時はPND93というタックスフォームで対応することでまとまった。一方で、きちんと毎月グロスアップ計算で所得申告しても、帰任後に還付金が発生するケースもあり…~

※本事例のレッグ社タイ法人は駐在員11名、スタッフ規模50名程度の加工および試験業者である。

帰任後に還付金が発生するケースとして、まず最も当てはまるのが、年度途中など早い段階での帰任だ。所得控除は暦年で算定するが、それ以上に所得総額が相対的に低くなることで低い税率のテーブルに収まって計算されることが要因となる。暦年で一度計算したものを月に引き直す、タイ独自の所得税計算の仕組みからすると、その分手戻りが発生する可能性が高くなるのだ。

もう一つ、レッグ社のように暦年が締まってから日本分をまとめて合算所得計算する場合とは異なり、毎月の計算時にみなし額として日本での賞与を含めるか含めないかでも違ってくる。どの会社でも普通は賞与額はある程度成果や評価を反映するので、最初から確定させるのは難しい。そのため、タイで毎月グロスアップ計算していても、賞与分だけは最終的に追加発生するので税金も還付方向にならず、追加で納付するケースが多いのだ。
このクライアントの場合は、賞与分もみなしで含まれた上で毎月グロスアップ計算していた結果、追加で発生する所得で調整できず、還付方向になってしまったかたちだ。

還付金は本人しか受け取ることができない。しかし、還付額は大抵2~3万バーツほどという日本―タイを往復するくらいの絶妙な金額なので、わざわざ本人が来て手続きをするのも悩ましいところだ。そうなると事実上は泣き寝入りになってしまわざるをえない。

さて、最後にレッグ社の大丘さんと、レッグ社が会員になっているゴルフ場内のレストランに来た。流石に会員と同伴者しかプレーできないゴルフ場だけあって、レストランも品が違う。ちょうど6月の帰任者対応に入ったばかりの頃で、「7月にもひとり帰任されるとか?」「そうですね。ちょっとまだ決まってないのですが、その時はまたよろしくお願いします」という会話を交わした。

プレー後のせいということもあっただろうが、一区切りついたことが大きかったのだろう。その時のシンハービールは格別の味がした。
(次回から新編「シーポム社編」が始まります)
※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke), Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表:日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/


但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。
本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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