ビジネス・経済 2017.06月号

アジアの紙に関わる企業、人の交流の場をつくり、アジアの紙加工業界を発展させる初のコミュニティ、「アジア紙加工研究会」が発足。

企業や業界の垣根を越え、技術やアイディアを組み合わせることで、新たな商品やサービスを生み出す“オープンイノベーション”。その紙加工業界におけるプラットフォーム「紙製品加工技術研究会」を2004年に生み出したのが、創業90年の老舗紙加工メーカー・中山商事の中山裕一朗氏だ。中山氏は研究会のフィールドをアジアに広げるべく、昨年「アジア紙加工研究会」を発足。タイから活動をスタートさせている。

きっかけはIT企業時代、オープンソースとの出会いだった

前職は外資系のITベンチャー企業に勤めていました。ちょうどオープンソースのソフトウェアが広がり始めた時代で、この考え方はほかの業界でも使えると思い、紙加工業界でもやってみることにしたんです。
地方の町工場が大手企業に営業をかけて、商品やサービスを売るのは簡単なことではありません。売れたとしても、他社と価格の下げ合いで競っていては業界のためにならない。お客様に声を掛けていただける商品・サービスを持つべきだと思っていました。しかし、商品やサービスの開発には技術やノウハウが必要です。それを自前で確保するのは、特に中小企業にとっては至難の業。だったら、オープンソースとして、みんなで技術やアイディアを持ち寄れる、業界のネットワークを広げられる場をつくろうと発足したのが、「紙製品加工技術研究会」でした。
自社の技術ノウハウをただHP上で公開するのではつまらないと思いましたし、その技術ノウハウを知りたいと思うのがどんな人なのか知りたかったので、入会費・会費は無料に。会合を開くといった手間の掛かることもしたくなかったので(笑)、情報発信から活動を始めました。

ちょうどその頃、紙加工の技術について業界誌で連載を始めることになり、そこで「紙製品加工技術研究会」の案内を載せてみたら、少しずつ会員が集まり始めました。その後もプレスリリースを行うなど、メディアへの露出を増やしたところ、歯科医院や革加工業者など、一見紙とは無縁と思われるような、意外な事業者の方々が参加くださった。それまで、営業に行くことを思いつきもしなかったような業界との取引が生まれ、思わぬニーズの発掘につながりました。
その後も毎月、会員向けに技術情報を配信し続け、技術力向上や商品開発の活動を進めました。活動は日本国内でしたが、会員数が200社まで達し、研究会の成果も一定水準に届いたので一旦休会していました。このたび研究会の活動フィールドをアジアに広げたいと思い、昨年「アジア紙加工研究会」を発足させました。

先細る日本市場から視点をアジアに

「アジア紙加工研究会」の活動は、日系企業が多く進出するタイからスタートしています。私自身も泰日工業大学で教鞭を取られている細谷功さんのクラスで、ゲスト講師としてモノづくりを学ぶタイ人大学生と交流していたので、タイには縁がありました。

日本の製造業が国内の市場だけで生き抜ける時代ではなくなってきています。特に中小企業には漠然とした不安がある。海外進出は検討しているし、アジアの市場に熱があるのも分かっているけれど、そこからどうして良いのかが分からないんですね。日本の企業がアジアの市場をターゲットにするなら、まずはリサーチが必要です。現地の情報を知っているのは現地の人や企業で、本当に聞きたい情報を持っているのも彼らです。
私は、日本の企業は実際に現地の紙加工業者と交流を持つべきだと考えているので、日本の業者と、ローカル業者を引き合わせる後押しをしています。現在は会員同士を引き合わせ、ネットワークをつくっていて、ベトナムでの活動も強化中です。その中で取り引きが生まれれば、あるいは一緒に何かつくることができれば、うれしいじゃないですか。

世界的にみると、紙加工の業界で先端技術を持っているのは北欧です。アジアでは、特にB to B製品に関しては仕様や機能が出尽くしてしまっているのですが、例えば梱包材や緩衝材といった消費者の目に触れないものでも、製品開発の段階でデザイナーに入ってもらい、使う人がミスを起こしづらい設計にすることで実用性を高められたら、工場で働く人の安全性が高まり、作業も楽しく変えられるかもしれないですよね。こういった世界の先端技術を、アジアに持ち込むという構想も温めています。


泰日工業大学では、ゲスト講師として日本のモノづくりをタイ人大学生に伝えている


中山 裕一朗
なかやま ゆういちろう
創業90年 老舗紙加工メーカー三代目社長。
東京理科大学卒業後、旧財閥系総合商社でシリコンバレーで開発された特殊半導体を輸入販売。その後、外資系ITベンチャー企業(人工衛星を使った通信事業)を経て、中山商事株式会社に入社。様々な経営革新に取り組み、県の「新事業フロンティア・コンテスト」でグランプリを受賞。「新分野展開スタートアップ支援企業の認定」など多くの経営革新に関する賞を受賞している。
2004年、業界初の紙加工技術を公開・研究する会「紙製品加工技術研究会」を発足。業界で一躍注目を浴びる。恐竜王国ふくいで生まれた紙の知育玩具『きょうりゅうしょうぎ』を商品開発し、全国の百貨店・玩具店・書店で販売。また、マスコミ各社(テレビ・ラジオ・新聞各社・ビジネス誌・業界誌など)に多数の掲載実績を持つほか、全国の商工会議所や青年会議所などで、中小企業のV字回復や商品開発、経営革新の講演を行なっている。
著書に『崖っぷち会社が生まれ変わった3つの方法』(フォレスト出版)。「紙パルプ技術タイムス」(テックタイムス社)で『図解!5分でわかる紙加工技術』、『老舗を再生させた三代目が、どうしても伝えたい「経営革新」講義』、『ものづくり企業に贈る、海外訪問記』を。「カートンボックス」(日報ビジネス社)で『経営者と社員のための、使える紙加工技術』、『ものづくり町工場の「4コマ」経営革新術』を連載。

 

「アジア紙加工研究会」とは?

母体は日本国内の紙関連企業を集めて紙加工技術の研究開発を行うことを目的に、2004年に発足した「紙製品加工技術研究会」。モノづくり業界において重要な地域に発展しているアジアが、紙加工においても生産、技術開発の最重点地域になると鑑みて2016年に発足した。アジアの紙関連企業や研究機関、団体、個人の会員を集め、紙加工技術の研究開発、イノベーションを行い、アジアの紙業界、モノづくり業界を発展させていきたいとの想いで活動が行われている(2017年5月時点で30社が参加)。また、本研究会で配信している紙加工技術情報は将来「紙加工技術の教科書」としてまとめていく予定。

目的
①アジアの紙加工メーカが集い、紙加工技術や生産性向上のための知恵を出し合い、研究を行う。②紙加工の新しい技術開発、商品開発、用途開発を行う。③製品、ソリューションなどを研究開発し、業界にイノベーションを起こす。④多くのメンバーが参加することで、アジアの紙加工の中心的コミュニティになる。

活動内容
①中山商事(創業90余年紙加工メーカー)から定期的に情報を配信いたします。配信する情報は以下の内容を検討しております。
●中山商事の紙加工技術ノウハウ ●紙、包装業界の業界誌に連載中の記事、注目記事 ●紙加工に関する新製品情報 ●業界のトレンド情報 ●工場の生産性改善、ムダ取り事例等
②配信方法(頻度):メール(月1回)、facebook(月1回)
③配信した情報に対するご意見やご質問等に随時お答えします。また、メンバー同士で情報交換等も行っていきます。⑤定期的にメンバーが集まる交流会を企画(希望者のみ)⑥日本、タイ、ベトナム等の紙加工メーカーへの視察を企画(希望者のみ)

参加する意義・メリット
①自社の紙加工技術を向上することが出来る。②自社工場の生産性を改善することが出来る。③新しい技術開発,商品開発,用途開発が出来る。④多くのメンバーと知り合い、協業することが出来る。⑤注文が増える。(本研究会への問い合わせから受注に結び付く)

参加の条件
●製紙、紙加工、紙代理店など、紙に関わる業務を行っている企業・個人 ●紙を使用している、紙に興味がある企業・個人 ●大学、高校などの教育機関、研究機関、団体等
開催国:日本、タイからスタートし、ベトナム、その他アジアの国に広げていきます。
入会方法:入会フォーム、またはメールにて受付中(問合せ先を参照)。
会費:入会費、年会費等 無料
主催・問合せ先
中山商事株式会社/代表取締役社長 中山裕一朗
〒910-0804 福井県福井市高木中央2-509
TEL:0776-53-8000 FAX:0776-54-4793
http://www.nakayama-shouji.jp
E-mail: info@nakayama-shouji.jp

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