日刊工業新聞

グローバル 経営 適地生産適地販売 伊藤鉄工―継ぎ手、ベトナムに移管

高品質・コスト減で増産本社工場、鋳鉄マンホール用ふた特化

伊藤鉄工は、今春から本社工場と海外の外注先が担っている継ぎ手の生産を、ベトナムの生産子会社に移管した上で増産体制を敷いた。これまで継ぎ手の生産をしていた本社工場は他社向けのOEM(相手先ブランド)を含めた鋳鉄マンホール用ふたの生産に特化する。

ベトナム工場では継ぎ手の生産を進める

伊藤鉄工の主力商品は衛生排水や建築土木に不可欠な「管材製品」で、特にマンホールふたや継ぎ手の扱いが大きい。また都市や公園計画のシンボル、アクセントとなる「景観材製品」、キッチン用品などと鋳物技術を活用し、用途を広げてきた。
海外生産の流れのなかでベトナムに工場を設け、本格的に操業を始めたのが2008年の5月。現地法人である「IKICAST ベトナム」は当初、伊藤鋳造鉄工所(茨城県東海村)など3社で設立した。現在は1社が現地法人から離脱し、伊藤鋳造鉄工所と折半出資で運営している。

伊藤鉄工は継ぎ手の生産を本社工場と中国の生産委託先から、ベトナム工場へ移管し、生産体制の増強を決めた。この背景には現地法人設立から10年以上を経過しベトナムでも「日本クラスの品質が確保できるようになったためだ。加えて中国での生産委託が、数年来の円安傾向でコスト的な魅力がなくなった」(伊藤社長)こともある。

「ベトナムの人は教育水準が高く、仕事が熱心で上昇意欲が強い」(同)といい、現地の人で主要なところを任せられるところも魅力だ。
継ぎ手の需要は急増しており、これに対応するために、思い切ってベトナム工場への生産移管を決めた。このため、ベトナム子会社に自動造形設備や機械加工設備、塗装設備などを導入し、設計を含めて一貫生産体制を確立した。本社工場から移転などを含め生産再編に伴う投資額は2億5,000万円から3億円となる見込みだ。これまで、継ぎ手の生産は需要に対応しきれない状態もあり、販売機会の損失を招いていたという。ベトナム工場で増産体制を敷いて本格稼働、これまで対応しきれなかった需要に対応していく。合わせて継ぎ手の生産コスト削減も狙っていく。

一方、本社工場はマザー工場と位置付け、得意の鋳鉄マンホールふたのOEMに特化する。増えてきた中国産鋳鉄マンホ ールふたは、品質が安定しないといわれ、長年の技術と東京近くに工場を持つ同社の強みが発揮できる。

鋳鉄マンホールふたはその種類の多さも特徴。本社工場で生産すれば、制約を受けることなく、生産できる。このため、OEM生産に特化し、受注を獲得する体制を敷いた。
為替の影響を回避し、今後の海外の有力工場と位置付けるベトナム工場と国内本社工場の品質の高さを背景に多品種の生産を実施、ベトナムと川口の本社工場を使い分ける。

※記事提供・日刊工業新聞(森谷信雄 2017/3/1)

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