【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

【連載】半歩先読み、タイ自動車市場 ~タイ自動車ユーザの実態と展望~ 第6回

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第6回 安全性・装備への高い関心は政策の先を行く

NRIは、「エコカー」「ピックアップ」「E85対応車」「安全性・装備」の4項目を選び、ユーザニーズの変化と政策の効果を検証した。具体的には、バンコクおよび地方都市ウボンラーチャターニー(以下、ウボン)で対面式の簡易アンケートを行うことで、ユーザニーズを把握した。
本稿では「安全性・装備」の結果について述べる。

安全性・装備に対する政策の内容と影響

タイは、自動車の輸出基地となるべく、国際的な車両・装置等の型式認定相互承認協定である「1958年協定」に加盟している。そして、自動車の構造及び装置に関する規則である「UN/ECE規則(2015年3月現在、装置ごとに128の項目が制定 )」の採用を進めている。
「1958年協定」では、加盟国は「UN/ECE規則」を任意に採用することができる。タイはマレーシアに一歩遅れており、安全性・装備に関しては必要最低限の「UN/ECE規則」の採用から進めている。一方で、エコカー政策(第二弾)において、政府は対象車の適用条件としてABS・ESC搭載を義務化している。
このように、タイは全車種に対しては必要最低限の安全装備を導入させつつ、あわせてより先進的な安全装備の導入を政策的支援の対象であるエコカーに義務化している。当施策の継続性や影響について知るためには、タイのユーザの安全性・装備に対する考えを把握していく必要がある。

安全性・装備に対するユーザの認識

タイのユーザに「現有車を購入時に重視したこと」と「買換え時に重視すること」を確認した結果、バンコク・地方都市ウボン共に「安全性」を重視する傾向が強まっていることが確認された(図表)。

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また、タイのユーザに安全装備(ABS/ESC)への認知度を確認したところ、特にバンコクにおいて、内容を知る人が約4~6割にも上ることが確認された。
タイでは交通事故が多く(※)、安全性・装備への潜在的な関心がもともと高かったといえる。そして、タイ新車市場の競合環境が厳しくなる中で、新車メーカが安全性・装備での差別化を図り併せて積極的な広告宣伝を行ったこともあり、ユーザの関心が高まってきた。当分野については、他の自動車関連政策とは異なり、ユーザニーズが政策を先行しているといえる。
更なる市場活性化のために、日系企業は、安全装備導入を促す法制度の整備や、安全装備に対する関心と知識にギャップのある地方への広報活動を促していく必要があるといえる。
次回は、これまでの結果を踏まえて「タイ自動車産業の展望・生産回復の見通し」について考察する。
(次回、ArayZ2017年1月号に続く)

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執筆者:野村総合研究所タイ
シニアコンサルタント
山本 肇

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主任コンサルタント
吉村 英亮

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業務内容》経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、 情報システム(IT)コンサルティング、産業向け IT システム(ソフ トウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
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