PwC タイビジネススタディ

PwC タイ税務スタディ 第6回 固定資産の除却に係る税務

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土谷豊弘
Director
一般事業会社を経て1997年中央監査法人監査部に入所。会計監査、株式公開支援業務に従事した後、2004年4月よりPwCタイ法人バンコク事務所に勤務。
日系企業に対して会計監査、税務関連業務の他、法務、投資、M&Aといった各種コンサルティング業務等、多岐に渡るアドバイスの提供、サポートを行っている。日本国公認会計士。

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<質問>

中古機械あるいは陳腐化した機械を除却する場合に、 除却損を税務上の損金とするためには、 どの様な手続が必要ですか?

1.固定資産の除却(通常の場合)

会社は固定資産の取得あるいは資本的支出を行った事業年度において、その取得額あるいは支出額の 全額を損金処理することはできません(歳入法典第65条ter(5))。一 方、歳入法典第65条bis(2)および勅令145号に基づき減価償却費を損金処理することができます。 なお、会社は勅令145号に定められた償却率を超えて減価償却することはできません。
ただし、固定資産に修理不能な欠陥があり、これを廃棄もしくは売却する場合には、歳入法典第65条ter(5)における制限に該当しないため、廃却・売却時の残存価額を損金にすることができます(歳入局通達仏暦2538年Paw58号)。

1ー1.固定資産の廃棄

欠陥のある固定資産を廃棄する場合には、歳入局は、会社に対して、①廃棄の事実を示す十分な書類、および②廃棄手続が固定資産に直接的損傷を与えるものである旨の監査人による証明書を取得することのみを要請しています。
しかしながら、税務調査時のトラブルを回避するために、固定資産の廃棄手続についても、歳入局通達仏暦2541年Paw79号に定める棚卸資産(作業屑、仕損品、陳腐化品、期限切れ品)の廃棄に係る規定に準拠することが望まれます。
当該歳入局通達を固定資産の廃棄に適用した場合には、以下のような手続が必要です(第3・4回 棚卸資産に係る税務(ArayZ2015年11月号・2016年1月号掲載)もご参照ください)。
(1)固定資産の破損状況を確認す るための検査を行い、社内承認権者の承認を得る。 (2)社内承認権者の承認の後、補完部門、経理部門、販売部門、可能であれば監査人からできるだけ多くの者が資産の検査および廃棄に立会い、立会人としての署名する。 (3)会社は廃棄予定日の30日前までに、所管の歳入当局に廃棄の旨を通知する。状況に応じて当局担当官が、廃棄に立ち会い調査する場合がある。

1ー2.固定資産の売却

固定資産を売却する場合には、売却価額が簿価を上回っていれば、その差額は税務上の益金になります。

1ー3.固定資産の再評価

会計上において固定資産の再評価が行われ、結果として当該資産の評価額が増減したとしても、税務上の減価償却費の計算には影響を与えません。つまり、減価償却費の計算は、再評価前の簿価に基づき再評価前に適用されていた方法および勅令145号で定められた償却率に従い、再評価前の残存償却期間において行うことになります。

2.固定資産の除却(BOIの場合)

投資奨励(BOI)を受けた企業が固定資産を廃却する際には、以下のポイント別にその取扱いを考慮する必要があります。
(1)除却損失の損金化
(2)売却収益の法人所得税免税
(3)輸入関税等の免税

2ー1.除却損失の損金化

機械設備等の固定資産を廃却する際の損失(残存価額相当額)を税務上の損金とするためには、通常の場合と同様、歳入局通達仏暦2538年Paw58号に定める方法等に準拠しなくてはなりません。

2ー2.売却収益の法人所得税免税

BOI企業が機械等の固定資産を売却する場合は、売却に伴う収益が課税対象の所得になるか否かが問題になります。BOI企業は投資奨励法の第31条に基づき、それぞれの投資計画により、3年以上8年以内の範囲で法人税の免税が認められています。BOI企業は、認められた期間中は投資奨励事業(BOI事業)から獲得した収益を課税所得に含める必要がありません。
一般に、BOI事業からの収益とは、投資奨励証書に規定された事業から直接獲得される収益を意味しますが、この収益には、投資奨励委員会にて承認された派生製品や半製品の販売も含まれます(最高裁判決仏暦2543年8952号)。換言すれば、その他の活動から獲得された収益は、たとえそれがBOI事業と関連する活動であっても免税恩典の対象にはなりません。
この点に関し、歳入局告示(仏暦2530年発行)では、BOI事業から直接獲得された収益でなくとも、 BOI事業と密接に関連する特定の収益は、BOI事業から獲得された収益と見做すとされています。そ して、使用見込のない機械(修繕不能機械)の売却収益は、BOI事業と密接に関連する特定の収益とされています。
修繕不能機械の売却収益をBOI免税収益として扱うためには、会社は、BOIおよび歳入局の双方より事前に承認を得る必要があります。この場合、会社は当該売却予定資産が、事務所用資産としてではなく、BOI事業用資産として使用され、現在は使用見込がないということを証明できるようにしておく必要があります(税務ルーリング仏暦2532年7月6日Kor. Khor0802/9713号 )。

2ー3.輸入関税等の免税

輸入関税の免税や減税等の恩典を受けて輸入した機械設備を廃棄する場合には、関税とVATに関するBOI規定に準拠する必要があります。
投資奨励法第28条/第29条によると、BOI企業は機械設備の輸入について関税の免税や減税等を受けることができます。
また、VAT歳入局長告示20号によると、BOI企業は機械設備の輸入に課税されるVATの実際の納税を担保や保証金(銀行保証やBOIからの文書)を保証として差し入れることにより代替できます。また、この場合の担保は、BOIが関税当局に対して発行する「機械が 奨励事業のため輸入されたものであること」を証する文書により解除することができます。
投資奨励法第40条では、上記の輸入関税恩典を利用して輸入した機械設備をBOI事業以外の目的に使用することを禁じています。この場合、5年以内の譲渡や廃棄もこのBOI事業目的以外の使用とみなされます。従って、BOI企業が輸入時に減免税を受けた機械装置を廃棄あるいは売却する場合には、BOIの認可を得る必要があります。 BOIの認可なく廃棄あるいは売却した場合には、減免を受けていた輸入関税やVATを課せられることになります。
機械装置の廃棄について、BOIはBOI告示仏暦2537年Paw9号において、下記の通り条件/手続を規定しています。

① BOI企業は、破損/欠陥のある機械装置を廃棄/売却するため、文書でBOIに申請をします。申請の際には以下の項目が記載されることが望まれます。
(a)破損/欠陥のある機械装置の種類および数量
(b)破損/欠陥が生じた理由および(もしあれば)その証拠
(c)機械装置に係る税金に関し減免を認可した文書の写し(イン ボイス/パッキングリストを添付)
(d)受領者の氏名および住所(輸出あるいは寄附の場合)

② 会社はBOIの調査のため、当該機械を保管しておく必要があります。認可を得た後、BOIの監督下において、売却/廃棄手続を実行する必要があります。

③ 通常、税務恩典が無効となることなく機械装置を廃棄することが認められる場合は下記の通りです。
(a)BOIによって認められた方法に準拠して行われる廃棄
(b)輸出
(c)BOIによって認められた政府機関への寄附
(d)商業的価値がなく、BOI企業に対して収益をもたらさないとBOIが判断した場合

2ー4.事例研究

BOI企業であるX社は、3年間使用した後に欠陥が生じた輸入機械装置の廃棄を計画しています。その機械装置は輸入時にBOI恩典 により関税が免除されていますが、 X社はBOIに廃棄許可を申請して許可を受けています。
上述の場合は、機械装置をBOIが認可した方法で廃棄するため「BOI事業以外の事業への使用」とは見做されず、輸入に係る関税およびVATの課税問題が生じることはありません。

このコラムは「時事速報BANGKOK」で 以下年月に掲載されたものです。
◎2015年9月2日、10月7日

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