法務・会計・税務 2018.04月号

【連載第50回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

シーポム社編(6)
「新体制の危機」

(前回までのあらすじ)
〜メイさんの辞意がきっかけで派遣サポートとして2名を投入したが、メイさんは結局残ることになったためバックオフィス体制として充実の4名体制となった。これで当面安泰かつレベルの底上げにも繋がると期待していた矢先に起きたのは…〜

かつてない充実したバックオフィス体制になったシーポム社。残ることになったプロパースタッフのメイさんは、山雲さんの予実管理やキャシュフローマネジメントのフォローを。派遣で送り込んでいるムマさんは記帳対応から全体のとりまとめ、同じく派遣のラムさんは入出金管理を中心としたフォロー。さらに簡単な記帳や書類の発行などアドミン対応をするプロパースタッフの4名で、20名程のシーポム社を運営していくには十分な体制だ。≪※1≫

だが、そんなほぼ完全と思われた体制が思いの外、機能していないことに気づくにはそう時間はかからなかった。

うちのタイ人シニアマネージャーが、「こちらで引き取ったはずの連結システム対応を、相変わらずメイさんが抱え込んでいて引継ぎができていません。それからラムさんに対する不満も出ています」と報告してきたのは新体制開始後わずか1ヵ月。

「メイさんが手隙になった分で対応するはずの予実管理などもうまくまわっていないようで、結局慣れ親しんだこれまでの業務をしているみたいですよ」ということも聞き、山雲さんにも聞いてみたところその通りで、「どうも最近、雰囲気が悪いんです」とのこと。

しかもラムさんに対しての不満の理由というのが、「礼拝の時間にちょくちょく仕事を抜けるのと、ランチタイムが長い」というもの。 ≪※2≫

ラムさんは敬虔なイスラム教徒のタイ人であり、信仰上の理由で仕方がないことを前提に受け入れているはず。ランチタイムが長いのは、こちらからも注意して次回以降改善すれば良いだけの話と、最初は大した話ではないと思った。

ところがよくよく聞いてみると、もっと根深いところに問題があった。
「派遣のラムさんの給与って、プロパーのメイさんの給与に肉薄する金額ですよね?」とシーポム社の人事担当スタッフ。もちろん派遣報酬として、いくばくかはチャージさせていただいた上でだったが、それを差し引いてもということらしい。≪※3≫

そう、思い返せば全ては採用時にふと思った割高感から始まっていたのだ…。

≪※1≫
経理内製化の目安として、業種にも依るがスタッフ総数20~30名以上を分岐点としたとき、アドミンスタッフも含めて2~3名で切り盛りするのが安定的だと考えられる。さらに人数が増えたときに、入金管理(ARと言われる売掛金消込管理など)や出金管理(APと言われる買掛金支払管理)など細分化していく傾向にある。ジョブローテーションのないタイの土壌だと、ARやAPのみしか対応してこなかった経理スタッフが存在するのはこういった背景がある。
≪※2≫
タイ全体では圧倒的に仏教徒が多いが、バンコク中心部でもたまに見かけるのがイスラム教徒。タイでは履歴書など身上書に宗教を記載する欄があるのが一般的。
≪※3≫
近年、給与情報の管理は、日系企業をはじめきちんと対応するようになってきているが、それでも仲の良いスタッフ同士などではお互いの給与情報を共有することがありえるので、それを前提に給与査定などに気を使う必要がある。一律に上げるのか、明確に理由を明示するのか、どちらにせよ曖昧な運営をしていると、昇給が低かった人だけでなく、辞めてもらいたくない人も辞めてしまう可能性もありえる。

Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke), Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表:日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/


但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。
本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

バックナンバー Back Number

バックナンバー Back Number

gototop