PwC タイビジネススタディ

割賦販売に係るVATの取扱い/ 売上金額訂正に伴うVATの取扱い

割賦販売に係るVATの取扱い/
売上金額訂正に伴うVATの取扱い

1.割賦販売を行う場合には、商品販売時に、所有権の移転も代価の全額支払いもありません。この場合のVATの取扱いはどうなるのでしょうか?

2.当社は商品価格総額の計算間違い、価格変更、商品価格の誤りといった理由により借方票(デビットノート)を発行しました。さらに、当社は商品を得意先に重複して2度発送するとともに、タックス・インボイスも二重発行してしまいました。得意先からは、余計に発送した商品の返品を受けました。このため、当社は「二重請求」と説明を付した貸方票(クレジットノート)を得意先に発行しました。この借方票、貸方票はVAT税務上有効ですか?

松下 駿太郎
Manager

2009年にあらた監査法人に入所、日本において製造業を中心に約5年間監査業務に従事。

2015年9月にPwCタイに赴任。タイ国日本企業の会計監査、内部統制監査などの監査業務のサポートだけでなく、会社設立やビジネスライセンス取得、事業再編などを税務および法務面でサポートしている。日本国公認会計士。

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1 割賦販売に係るVATの取扱い

VATはタイ国内で販売活動を行ったときに課されるものであるため、買取選択権付賃貸借(Hire Purchase)や割賦販売もVATの課税対象取引に含まれます。

歳入法典第78条によると、一般的な販売取引の場合、販売者がタックス・インボイスを発行し、購入者よりVATを徴収する義務は、その商品の出荷時点で発生します。ただし、商品出荷前に下記の行為があった場合には、これらの行為のもっとも早いタイミングが、VAT課税の発生点となります。

① 商品の所有権移転
② 商品対価の受領
③ タックス・インボイスの発行

しかしながら、買取選択権付賃貸借(Hire Purchase)や割賦販売の場合には、商品の出荷時点で所有権が移転しないため、VAT課税は、分割支払期日毎にその支払割合に応じて発生するものとされています。

したがって、会社が買取選択権付賃貸借や割賦販売により商品販売した場合は、受取期日が到来するごとに、実際の代金受取がなくても、受取予定金額相当額のタックス・インボイスを発行し、VATを請求しなければなりません。歳入局通達36号/仏暦2536年によると、契約が破棄されるまでには、たとえ顧客からの支払いが不履行となっていたとしても、会社は受取期日にタックス・インボイスを発行し、VATを徴収する必要があります。

ただし、支払期日前に下記の行為があった場合には、行為の発生した時点が課税点となります。

① 商品対価の受領
② タックス・インボイスの発行

Box :
《事例》
A社は2017年4月30日に、顧客であるB社に100,000バーツの商品を販売しました。支払方法は2017年5月1日から2018年2月1日までの10ヵ月間において、毎月初日に10,000バーツを支払う分割払いとしました。しかし、B社は8回目まで支払いをしていましたが、2018年1月初日に残額の20,000バーツを全額支払うと申し出、B社はそれに対して5%(1,000バーツ)の割引を行いました。結果として2018年1月に顧客が支払った金額は19,000バーツとなりました。
⇒A社は2017年5月から12月までの毎月、10,000バーツの支払いについてのタックス・インボイスを発行し、VATを徴収しなければなりません。そして2018年1月においては、19,000バーツではなく、20,000バーツのタックス・インボイスを発行し、VATを徴収する必要があります。A社が行った1,000バーツの割引については販売後の値引と考えられます。歳入法典第79条(1)の「販売時に販売価額から差し引かれた値引についてはVAT計算に含めない」とする規定に該当しないことから、VATの計算上、これを考慮することはできません。
なお、A社は2018年2月の支払期日が到来しても、2月分は1月に既に支払われており、タックス・インボイスも発行されていることから、再度タックス・インボイスを発行したり、VATを徴収したりする必要はありません。

2 売上金額訂正に伴うVATの取扱い

本質問では、会社は複合的な理由により借方票を発行しています。上述の通り、借方票の発行の是非は、その発行事由によります。価格変更あるいは価格違いといった理由だけでは歳入法典第82/9条および歳入局通達80号/仏暦2542年で認める理由には該当しないため、原則として、借方票の発行はできません。価格変更あるいは価格違いが、総額として売上額の過少計上をもたらしているのであれば、同条および同通達により、売上総額の過少計上相当額の借方票の発行が認められます。この場合、借方票発行事由は、商品価格の変更等ではなく、あくまで、「商品総額の計算誤りのため、総売上金額の上方修正を行った」ということになります。

他方、すでに販売した商品に関する二重請求の修正を行うために貸方票を発行することは、歳入法典第82/10条あるいは歳入局通達82号に規定する貸方票発効要件に該当しません。したがってこの場合には形式上、その発行事由を「受注内容に合致しないため、商品が返品された」とすべきです。

加算税と延滞税を回避するために、借方票/貸方票はその発行理由を法定事由に限定することが肝要です。

《解説》
1. 借方票(デビットノート)-売上VATの上方修正
会社がすでにVATの計算に含めた売上VATにつき、後日、下記のような事実が判明し、売上VATの上方修正を行う必要がある場合には、会社はそのような事実が判明した月において商品/サービスの購買者に対して借方票を発行しなくてはなりません(歳入法典第82/9条および歳入局通達80号/仏暦2542年)。

① 実際の販売数量が売上記録より多い場合や、請求金額の計算に誤りがあった場合で、総売上金額が過少になっていた場合。

② 実際のサービス提供が売上記録より多い場合や、請求金額の計算に誤りがあった場合で、総売上金額が過少になっていた場合。

2. 貸方票(クレジットノート)-売上VATの下方修正
借方票同様、下記のような事実が判明した月において貸方票を発行しなくてはなりません(歳入法典第82/10条)。

① 商品が受注内容と異なる場合、商品が不良品である場合、出荷数量や価格が受注条件と異なる場合等、歳入局長官が定めるその他の事由による場合で、売上金額の下方修正を行う必要がある場合。

② サービス内容が受注内容と異なる場合、サービスの品質に欠陥がある場合、金額が受注条件と異なる場合等、歳入局長官が定めるその他の事由による場合で、売上金額の下方修正を行う必要がある場合。

③ 商品が試供品や事前の説明と異なる場合等、歳入局長官が定めるその他の事由により、商品が返品され、かつこの返品を受諾した場合。

④ 歳入局長官が定める事由により、サービス提供が途中解約された場合。

ここで歳入局長官が定める事由とは具体的は下記のとおりです(歳入局通達82号)。

a 商品/サービスの購買者に対し、補償等の法的支払義務がある。
b 販売契約に基づき、商品/サービスの購買者に対して前受金、留保金、預り金等の返還を行った。
c 売買契約に基づき商品の返品あるいは交換を行った。
d 一般取引契約に基づき合理的な期間内に商品の返品あるいは交換を行った。
e サービス契約内容の一部不履行もしくは契約と異なるサービスを提供した。
f サービス契約内容の不履行。

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