法務・会計・税務 2017.07月号

在緬弁護士が解説 ミャンマーの最新ビジネス法務 | TNY国際法律事務所

第8回 雇用に関する規制

はじめに

ミャンマーに進出した企業がミャンマーで労働者を雇用する場合、ミャンマーの法規制に従って雇用しなければなりません。いずれの会社にとっても留意すべき重要な規制である、ミャンマーにおいて労働者を採用する際の法規制について解説します。

経済特区法に基づく投資許可を取得した会社は、熟練技術を必要とする事業のためにミャンマー国民の熟練工、技術者及び専門職員を雇用する場合、原則として全社員に占めるミャンマー国民の割合が、事業開始から2年で25%以上、次の2年(事業開始から4年)で50%以上、更に次の2年(事業開始から6年)で75%以上の割合となるよう雇用義務を負います。熟練技術を必要としない業務については、ミャンマー国民のみを雇用しなければなりません。また、それ以外の会社で熟練技術を必要としない業務については、ミャンマー国民のみを雇用しなければならないものの、熟練技術を必要とする業種についてはミャンマー国民の雇用義務はありません。
ミャンマーにはタイのように原則として外国人1名のWork Permitを取得するために4名のタイ国民を雇用する等の、Work Permitとの関係における国民雇用義務は存在しません。

雇用契約書の雛形が公表された。当該雛形以外の条項を用いた場合、承認されない事例が多数生じている。

雇用契約と就業規則

会社は、政府における常勤労働者、研修者及び試用期間中の者を除き、労働者の雇用開始後30日以内に労働者と雇用契約を締結しなければなりません。また、雇用契約締結後は当該契約書の写しを管轄労働事務所に提出し、承認を得る必要があります。さらに単に雇用契約を締結するのみならず、下記の表に記載している事項を雇用契約書に記載しなければなりません。

①職種 ②試用期間 ③給与 ④勤務地 ⑤契約期間 ⑥労働時間 ⑦休暇及び休日 ⑧時間外労働 ⑨勤務中の食事の手配 ⑩住宅施設 ⑪医療手当 ⑫仕事及び出張における車の手配 ⑬労働者が遵守すべき規則 ⑭研修参加後に継続して勤務しなければならない期間 ⑮退職及び解雇 ⑯期間満了時の対応 ⑰契約において規定されている遵守すべき義務 ⑱合意退職 ⑲その他 ⑳契約書の規定の修正及び追記の方法 ㉑雑則

労働・入国管理省が2015年8月、雇用契約書を雇用後30日以内に締結しなければならない旨の通知を発布し、雇用契約書の雛形も公表されました。当該雛形はミャンマー語版のみであり、工場での労働者を想定した内容となっています。
しかしながら実務上、当該雛形の使用を労働事務所の職員が強制し、当該雛形以外の条項を用いた場合に承認しない事例が多数生じており、会社が独自に雇用契約書を作成する際の妨げとなっている点に留意が必要です。
就業規則について、ミャンマーにおいてはタイと異なり、一定人数以上を雇用したとしても就業規則の作成義務などは課せられておらず、法律上は就業規則について何ら規定されていません。もっとも、実務上は従業員管理の観点から任意に就業規則を作成する会社も多く存在します。


堤 雄史(つつみ ゆうじ)
TNY国際法律事務所共同代表弁護士
東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。SAGA国際法律事務所(www.sagaasialaw.com)代表であり、2016年2月よりタイにTNY国際法律事務所(www.tny-legal.com)を設立した。タイ法及びミャンマー法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。
問い合わせ先:yujit@tny-legal.com

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