ArayZオリジナル特集

行って 見て 知る タイ企業 ~財閥のメコンビジネス戦略とは~

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Sahaグループ|Saha Group


Chuto Chirakunakorn氏 Assistant Vice President

最先端の設備導入で食の安全を実現

1942年、創業者であるティアム・チョクワタナー氏が中国雑貨の輸入販売店から起ち上げたサハグループは、現在では飲食料品をはじめ、日用品、化粧品、衣料品などの消費財や物流、工業団地運営など12の分野で事業を展開しています。実は、「サハグループ」という会社登記はなく、また「サハ」という名前が付いたブランドもありません。数ある企業の集合体をサハグループと呼んでいます。

当グループは、起業当時から問屋業としてさまざまな商品をタイ市場で流通させてきました。その経緯もあって、現在もローカル市場や、パパママストアなどと呼ばれる個人店を指すTT(トラディショナルトレード:伝統的流通)で幅広い販売網を持ち、首都圏以外の地方でも商品の流通ルートを確保しています。

小売業ではローソンと提携し、元々店舗展開していた小売店、108SHOPの供給ルートと既存店舗を活用し、LAWSON108を展開しているほか、製薬事業や介護学校の運営、タイ国内200万人の会員数を誇るポイントカード、His&Herを使った会員事業なども行っています。

サハグループが感じた日系企業進出のヒント6点

1967年、ライオンとの合弁会社設立を皮切りに、現在に至るまで数々の日系企業と提携してきました。現ブンヤシット・チョクワタナー会長は日本で就業経験があり、日本語が堪能で、日本のビジネス感覚も併せ持っています。ブンヤシット会長が日系企業のタイ進出の水先案内人を担い、古くから日系企業と多くの合弁会社を設立してきました。日本企業と非常に親和性の高い財閥だと言えるでしょう。

日系企業と数多くのビジネスを行ってきた経験から得た、6点のヒントを日系企業へ送りたいと思います。1つ目は日本での成功体験に縛られないこと。2つ目はタイ市場に見合う会社の繁栄を目指すこと。3つ目はタイ進出の目的を極めること。4つ目は、時には目的と違う事業への寛容さを示すこと。5つ目は、経営判断のできる駐在員を送ること。最後に、もっとタイ人に積極的に質問し、コミュニケーションを取ることです。

また、合弁会社のトップを務めるのがタイ人である場合は、業績が国の政治経済に左右される傾向があります。トップが日本人の場合は駐在員となるため、5年スパンで入れ替わるケースが多く、業績が政治経済より個人の能力に左右されてしまうことが多々あるように感じます。

サハグループ・グリーンファシリティーパークにて


サハグループは多くのメーカーと商品生産を行っていますが、近代的な問屋システムを軸に、グループ会社が生産した消費財や輸出向け商品を流すというビジネスモデルからも分かる通り、問屋業としての流通網が何よりの強みです。
最近ではネット通販サイト大手のLAZADAとの業務提携を発表するなど、Eコマースにも参入していますが、タイの小売全体に占めるEコマースの割合はわずか2~3%程度であり、また販路として強いのもMT(モダントレード)ではなくTT(トラディショナルトレード)です。サハはこのTTで幅広い販路を持っています。タイ国内には20~30万の小売店舗があるとされている中、CPグループのセブンイレブンは1万店舗を展開していますが、「1万店しかない」とも考えられるのではないでしょうか。

REPORT サハ工業団地内を視察!

サハグループはタイ国内4つのエリア、シラチャー、カビンブリ、ランプーン、メーソートで工業団地を運営している。今回、視察を行ったシラチャーの工業団地「サハグループ・グリーンファシリティーパーク」はバンコクから約120km、レムチャバン深海港から約6kmの距離に位置しており、入居企業はライオン、ワコール、旭化成、モルテン、セーレン、蛇の目ミシン工業、エステー、シキボウ、ケンミン食品、西濃運輸など、約90%が日系企業だ。
入居企業のほとんどがサハグループとの合弁会社や提携企業であり、その数からも日本との親密さが伺える。単なる場所貸しで利益を得るのではなく、お互いにリスクに責任を持つ、利害関係が生じる提携を交わしていることになる。


工業団地内の発電施設

工業団地内をまわると、働きやすい環境を目指していることも感じ取ることができる。タイの工業団地として初めて敷地内の緑化に力を入れたのはサハグループであり、周辺には日本人学校や病院もある。ファクトリーアウトレットでは周辺住民がグループ製品を購入できるほか、市場スペースの提供なども行っている。自社で管理している工業団地内の滑走路スペースでは、バーゲンの開催もしているという。


一般開放しているファクトリーアウトレット

サハグループとの合弁により、タイ市場で成功している代表的な日系企業の歴史を紐解いていくと、早期にタイで洗剤ブランドを確立し、台所洗剤ブランド「ライポンF」(日本ではモデルチェンジして今はもう市場に出回っていない)をタイ市場向けに今でも取り扱っているライオン、タイ人の体型に合った下着を開発したワコール、タイ人の趣向に合わせて8種類のマヨネーズを開発したキューピーといったように、タイの市場と真剣に向き合ってきた企業が目立つ。
逆にタイ市場に合わせず、アメリカ産の材料にこだわり続けた大手飲食店ではアジア通貨危機のドル高で経営を維持できなくなり、撤退を余儀なくされた。サハグループは今、タイと向き合い、苦難も共に乗り越え、長期的に信頼関係を結べるパートナーを求めている。


工業団地の小売店舗


工業団地内にあるプライベート滑走路(右側)


入居企業は日系がメイン

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