【連載】藪本 雄登氏がアドバイス! 新興メコンの最新法務事情 Vol.8

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 カンボジア編 カンボジア労働法休暇に関する規制・その1

1.国民の祝日

カンボジアの祝日は、年27日前後となっており、近隣諸国と比較してもかなり日数が多いので、注意が必要です。また、ご注意頂きたいのが日本法と異なり、国民の祝日は有給休暇として取り扱われる点です(労働法161条)。日給月給制を適用されている場合には問題が生じ得ますのでご注意下さい。

2.年次有給休暇

(1)有給取得数
週の労働時間が48時間の場合は1年目から年に18日(月1.5日)、40時間の場合は年に15日(月1.25日)付与されます。また、法令上、有給休暇は勤続1年後から利用することができる旨規定されています。(167条1項)。
なお、有給休暇は1~3年目が18日、4~6年目が19日、7~9年目が20日と以後も3年に1日ずつ増加しますので、注意が必要です。
(2)有給の持ち越し
有給は最大、年間の有給日数から12日を差し引いた日数が、以後、3年に渡って持ち越されると解されています(166条4項)。
(3)有給買取の可否
労働法では有給の放棄・免除などに関する合意を無該当すると考えられます。他方、労働契約終了時には有給の買取が義務付けられていますので(同条2項)、こちらについてもご注意下さい。

3.特別休暇

労働者は、自らおよび子の結婚、妻の出産、並びに配偶者、子および親の病気および死亡など、家族にとって重大な出来事があった場合、1年に7日まで有給での特別休暇を取得することができます(171条、2001年労働省令267号第1条)。年次有給休暇が十分に残っている場合、使用者は労働者が取得した特別休暇の日数を、残存している有給休暇日数から差し引くことが認められています(同省令第2条)。

ラオス編 ラオスの改正労働法・その2

1.試用期間に関する規制

2006年労働法(以下、「改正前労働法」といいます)では、技術を必要としない業務(肉体労働)については、労働契約における試用期間は30日以下、技術を必要とする業務については労働契約における試用期間は60日以下とされており、この点については改正労働法においても異なるところはありません。
しかし、改正前労働法においては30日間の試用期間の延長ができると規定されていましたが、改正労働法には試用期間の延長に関する規定が存在していませんので(79条)、注意が必要です。

2.女性労働者の雇用に関する規定

改正労働法では、産休は出産の前後に105日以上、そして、出産後に42日以上と規定されています(98条、なお、労働法は産休期間中の女性労働者に対し、通常の賃金の支払いを認めています)。

3.退職金に関する規定

改正労働法は、労働者の勤続年数にかかわらず、使用者による労働者の能力欠如、健康状態不良、人員削減を理由とする解雇、労働者による健康状態不良などを理由とする退職の場合、使用者は労働者に対し、当該労働者の契約終了前の月給の10%×勤続月数の金額を支払わなければならないと規定しています(90条)。
正当な理由なく契約が終了された場合には、使用者は労働者に対し、当該労働者の契約終了前の月給の15%×勤続月数の金額を支払わなければならないとされていますので(88条)、注意が必要です。

4.労働協約に関する規定

改正労働法は、労働協約に関する定めを新設しており、同法170条の労働協約は労働監督事務所に提出した上で、裁判所での登録または公証を受けなければならないと規定しています。
Yabumoto
JBL Mekong代表・藪本 雄登
カンボジアで数年間の実務経験を有し、ラオス提携事務所を往復しながら、新興メコン法務全般に従事。新興メコン地域の法務に関する知識と実務経験をもとに、メコン地域への進出戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、紛争発生時の対応などを執り行う。
【主な著書・執筆実績】
『カンボジアで事業を興す』(キョーハンブックス、2014年6月)
『カンボジア進出・展開・撤退の実務』(同文舘出版、2014年4月)
『カンボジア会社設立マニュアル』(日系公的機関より受託)
『カンボジア労務マニュアル 第2改訂版』(日系公的機関より受託)
『ラオス労働法』(日系公的機関より受託)

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