【連載】藪本 雄登氏がアドバイス! 新興メコンの最新法務事情 Vol.16

arayz feb 2015

◆カンボジア編 カンボジアの労働仲裁事例

就業規則の作成・登録

1.就業規則の登録義務
使用者は労働者数が8人以上(現地で勤務する外国人労働者を含む)となった場合、就業規則を作成し、労働監督官から署名を得なければなりません。
2.就業規則の作成
労働省が推奨する就業規則のひな形には、①試用期間②職務内容や権限③就業時間・休日・有給休暇など④賃金など⑤欠勤⑥就業時間中の会社・工事敷地・建物および建物内の設備・備品などの取り扱い⑦懲戒処分に対する労働者の権利⑧職業上の健康・職場の安全性に関する事項―が記載されています。
3.就業規則の登録
作成・変更した就業規則を労働省に登録するためには、過半数以上の労働者が所属する組合の代表者、労働者代表および労働監督官の署名が必要です。

労働者を雇用する際の規制

1.外国人労働者を雇用する場合の規制
外国人がカンボジアで働くためには、外国人労働を受けていること、雇用カード、有効なパスポートおよびビザを保有していること、伝染病に罹患していないことと、そして、業務を行うのに適した健康状態であることが必要です。
2.外国人労働許可(ワークパーミット)
外国人労働許可は毎年更新が必要となります。同許可については、2015年度から取締りが強化されることが発表されており、今後も規制強化が見込まれています。
同許可申請の前提として、まず、使用者による労働省への会社設立宣言、そして、外国人従業員割当の申請が必要となります。この申請は原則として前年の11月末までに行われる必要があり、申請に当たって、現時点および翌年度の外国人労働者、クメール人労働者の人数および役職(翌年度については見込み)を書面に記載し、労働省に提出する必要があります。
これらの手続を行った上で、労働省に翌年3月末までに、パスポートの写しなどの書類の提出、外国人労働者が支払うべき年次の労働許可および雇用カードに関する税金100ドルの支払いを行って外国人労働許可の申請を行うことになります。
労働許可を受けていない場合、罰則(労働法372条)に加え、そのことが発覚するまでに怠っていた上記年次の労働許可および雇用カードに関する税金100ドルの支払いを遡って要求されるという運用がなされています。
3.健康診断
外国人を含めたすべての労働者は、労働省労働保険局が実施する健康診断を受診しなければならず、ワークパーミットなどの申請にも健康診断の結果が必要とされています(健康診断費用は使用者の負担となります)。

◆ラオス編 ラオスにおける知的財産権

知的財産権に関する現状

ラオスは1995年にWIPO(世界知的所有権機関)設立条約、98年に工業所有権保護に関するパリ条約、2006年に特許協力条約に加盟しています。その後、13年2月にWTOに加盟したことにより、TRIPS協定にも加盟しています。
ラオス国内の知的財産権関連法令については、11年12月に改正知的財産法が公布されています。同法および同省令では、商標、特許、意匠、著作権などの基本的な知的財産権について包括的に規定しています。
商標権については、改正知的財産法および知的財産法に関する首相令により規定されています。商標については、年間約2,000件程度の出願が受理されており、科学技術省の知的財産局が管轄し、知的財産局内部にて各種審査を行っています。

商標の出願/登録

商標の登録要件は、カンボジアなどの近隣諸国と同様に、①識別性②同一の商品またはサービスについての登録商標、著名商標、地理的表示と同一でないこと③同一の商品またはサービスについての登録商標、著名商標と類似し、商品またはサービスの出所や関連性に関し混同や誤解を生じさせるものでないこと④法律で禁じられたものを含まないこと―、と規定されています。
また、近隣諸国と同様に、ラオスの先願主義を採用しています。
保護期間は、登録日から10年と規定されています。当該保護期間は10年ごとの更新、延長が可能となっています。
出願については、合法的な商業およびサービス業に従事する自然人または法人について認められています。

Yabumoto
JBL Mekong代表・藪本 雄登
カンボジアで数年間の実務経験を有し、ラオス提携事務所を往復しながら、新興メコン法務全般に従事。新興メコン地域の法務に関する知識と実務経験をもとに、メコン地域への進出戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、紛争発生時の対応などを執り行う。
【主な著書・執筆実績】
『カンボジアで事業を興す』(キョーハンブックス、2014年6月)
『カンボジア進出・展開・撤退の実務』(同文舘出版、2014年4月)
『カンボジア会社設立マニュアル』(日系公的機関より受託)
『カンボジア労務マニュアル 第2改訂版』(日系公的機関より受託)
『ラオス労働法』(日系公的機関より受託)

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