ArayZオリジナル特集

行って、見て、知る タイ企業 ~食品ビジネスとマーケティングの今~

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BET AGROグループ|Betagro PCL.



Vasit Taepaisitphongse氏
President

今年で設立50周年を迎えた大手食品メーカーです。飼料の製造販売から事業を開始し、現在では豚と鶏の畜産、食品加工を手がけるほか、自社製品の小売販売や飲食店の運営も行っています。

日系では伊藤ハム、味の素、丸大ハムなどと合弁会社を設立しており、飲食関係ではポムの樹、讃岐宮武製麺所、ピザーラ、Little Mermaidとも合弁契約を締結しています。CMなどを通して、飼料の会社からハイクオリティな食肉を提供する会社へと、イメージを変えることに成功しました。

安全な食品を提供するため、「品質」を最優先事項に

ベタグロは、製造から販売までを一気通貫で行う食品関連企業として、タイ国内外で25のグループ会社を展開しています。世界に約160の卸売拠点を構え、日本やヨーロッパ向けにも食品を輸出していますが、この10年ほど注力してきたのはタイ国内とASEAN市場です。

タイやASEAN諸国は中間層が増え、高品質な商品が受け入れられる環境が整ってきました。また、先進国にも輸出しているため、マーケティングよりも品質に重きを置いています。

食を通じて、人々の生活をより豊かにするというのが我々のビジョンです。

〝Qualityfor life〟をコンセプトに、事業に関わる農家や従業員はもちろん、消費者に良質で安全な商品を届けるということが最大の責務です。なかでも川上となる農家には、技術導入や知識提供を通じた生産効率の向上、そして自立を促す支援を行っています。農産物が不作で出荷が難しい時でも配当を支払うなど、不安定になりがちな農家の生活を支え、守るのも当グループの役目と考えています。

また、消費者の食文化や宗教に適応するため、食品関連の認証取得にも積極的です。NSF(NationalSaftey Foundation)が発行する、抗生物質なしで養鶏された鶏の加工製品にだけ与えられる認証は、当グループが世界で初めて取得しました。さらに独自の基準「BQM」を設けることで、さまざまな認証制度の基準を踏まえ、各国が定める基準以上の商品を生産できる体制を整えています。その商品が消費者の手に届く過程も確認できるよう、すべてのサプライチェーンの情報を公開する「E-Traceability」システムを、タイで初めて実現しました。

目まぐるしく変化するASEANでは失敗を恐れず参入した者が勝つ

当グループでは多くの国外企業とも事業を行っています。信頼関係のうえで正直に話し合い、お互いの強みが生きる連携ができれば、相手企業の規模や条件は問いません。

日本の企業は、「長期的な投資へのコミットメントの高さ」、「品質へのこだわり」、「生産プロセスへのこだわり」の点で魅力的である一方、「柔軟性のなさ」、「ダイナミックさに欠ける」、「機転(小回り)が利かない」ことが弱点だと感じています。

東南アジアは、数十年の間に目まぐるしいスピードで変化しており、このスピードの速い世界から一歩出遅れていないでしょうか。失敗しないよう、念入りに計画を練ることも大事ですが、成功よりも失敗が多くなろうとプロジェクトチームがトライ&エラーを繰り返し、失敗しても会社が責任を持つことで、スピーディーかつダイナミックな姿勢が、世界で勝ち残る鍵になるはずです。

Sahaグループ|Thai President Foods PCL.


Petch Paniangvait氏
Chief Business Development Officer

「国民食」の地位が招いた内圧と、小売による牽制が課題

即席麺の「MAMA(ママー)」は、タイ国内5工場と国外3工場で製造しています。

タイの即席麺の年間消費量は1人あたり49個で、これ以上の伸びはないと予測されます。消費量(個数)が伸びないならば、1個あたりの金額を上げたいところですが、6バーツの袋麺を食べている消費者を12~15バーツのカップ麺にシフトさせることは困難です。国内における袋麺とカップ麺の消費比率は8:2で、バンコクを中心にカップ麺の消費が伸びていますが、地方ではまだまだ袋麺が主流です。

長らく動きのなかったタイの即席麺市場を刺激したのは、1個40バーツ前後する韓国製の即席麺でした。このような輸入品とは異なり、国産品は価格のコントロールに対して内圧がかかります。MAMAが最後に値上げしたのは10年前で、袋麺を5バーツから6バーツに価格変更しましたが、さらなる値上げに関しては事実上、国からストップをかけられている状況です。

また、仕入れ値を小売にコントロールされてしまっている点も問題で、例えばセブンイレブンの棚取りは、マーケットシェアではなくマージンの多さで決まります。これ以上メーカーの利益が削られてしまわないよう、競合他社とはむしろ結束して、価格を守っていかなければなりません。私たちにできることは今のところ、同じ価格でいかに品質を守っていくかだと思っています。


ThaiPresidentFoodsは1972年、サハパタナ(サハグループの中核企業)と台湾企業の合弁で設立されました。即席麺の「MAMA(ママー)」は今となってはタイの国民食ですが、発売当時は即席麺の認知度が低かったうえに、屋台のラーメンのほうが価格が安く苦戦を強いられたそうです。

台湾企業が撤退して以後は小麦麺だけでなく米麺、菓子やパンの製造に着手。事業を育てて分社化させるサハグループの手法で上場企業を生み出し、タイ地場の食品企業グループとして成長してきました。

失敗から何を学び、次につなげるか

国外は、欧州市場に10年以上輸出していたため、ハンガリー工場を同エリアの拠点として設立しました。カンボジア、バングラデシュにも工場があり、競合が少なく、市場が見込めた場所を選んで進出しています。隣国ミャンマーはタイとほぼ同じ人口で、今後まだ消費量が伸びる可能性があります。

当社は45年、食品一筋で事業を展開してきました。即席麺が売れなかった時代に始めた米麺の製造は今も大きな事業として残っていますし、デンマーク企業と合弁で始めたクッキーの製造販売は失敗でしたが、機械はそのまま有効活用し​​ています。

大事なのは失敗から何を学ぶかであり、うまくいかない事業は無理には続けず、次に活かすのが当社のやり方です。今後も食品企業として、自社のペースでさまざまな事業に挑戦していくつも​りです。​

質疑応答では、こんな質問が・・・

Q.2016年には日本のラーメン店チェーン「幸楽苑」とフランチャイズ契約を締結しましたが、日本の外食産業がタイで成功するには?

A.日本の会社はリスクを嫌い形式を重要視するため、サプライヤーから出店地、メニューまで日本と同じやり方をタイまで持ってきますが、実際には割に合わないことのほうが多く、苦戦を強いられているように思います。まず、この「パッケージ」の概念を捨てられるか。そしてタイ側のパートナーや市場と向き合い、日本との違いをいかに理解し合えるかではないでしょうか。

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