中野陽介コラム

アート旅行記 世界に隠れた美の力3 スペイン/ゲルニカ

art

アート旅行記 世界に隠れた美の力3 スペイン/ゲルニカ

art

 

マドリッドのソフィア王妃芸術センターに展示されている、ピカソ作「ゲルニカ」。

349.3 x 776.6cmの実寸サイズで見ると、シンプルで分かりやすい構図・構成をしていました。色彩は痛ましいほど殺風景ですが、全ての線はイキイキとした躍動感に溢れ、作品の背後に隠れているメッセージの多さにも驚かされました。光と闇。生と死。希望と絶望。共存と殺戮。現実と非現実。この世とあの世。有機物と無機物。人間と動物。合理性と非合理性。個人と社会。理解と無理解ー。様々な対極がこの絵の中に同在していて、僕たちが生きるカオスな現実世界そのものを目の当たりにしているような思いになりました。

1937年パリ万博で初お披露目となったこの絵は当時の人々に衝撃を与えました。そして今尚その衝撃力は衰えることを知りません。芸術新時代の到来を告げ、その洗礼を与えるこの絵に生身で触れた人は、もう後戻りはできなくなります。

今までと同じ生き方、見方、感じ方ができなくなってしまう、また同じではいけないんだと思わせる起爆剤的役割を果たすのが芸術です。「ゲルニカ 」は、そんな芸術の本質的役割を、これほどまでにダイレクトかつダイナミックに表現できているからこそ、20世紀絵画における金字塔的傑作なのだと改めて実感しました。

art

しかしなんとも重たく寂しく痛々しい絵です。これはもう古いしヨロシクない。現代版として描きなおさなければならないと思って制作したのがこの絵です。悲痛な叫びは愛と調和を呼び込む叫びに、単調な色彩の世界は色彩豊かな世界に変わります。しかしピカソが真ん中上部に掲げた「 火の意志」は受け継ぎます。僕たちの魂の中にある「神聖な炎」こそが、 闇を照らす希望の光であり、その炎を堂々と燃やしていけばいいんだ! と
「ゲルニカ」は語り続けてくれています。 あなたの「神聖な炎」は何に燃えているのでしょうか。

結婚に興味のなかった2人が、バンコクの会社で出会って3年で結婚。夫でアーティ ストの中野陽介は本物の芸術を見つけるために、妻は次に住みたい国を見つけるために、1年間で23ヵ国を巡る“世界一周ハネムーン旅”を2016年6月からバンコクからスタート。

art

gototop