ビジネス・経済 2018.05月号

小型EV車「FOMM One」が間もなく走り出す

ASEAN地域で活躍する企業を紹介
ASEAN×BUSINESS×PERSON
FOMM Corporation

鶴巻 日出夫 つるまき ひでお

もう時効ということでそっとしておいて欲しいが、鶴巻少年10歳のころ、父のバイクを一人でこっそり運転したことがある。「坂道をこんなに楽に登れるなんて!」その時の感動が体に染みつきバイクの虜になった。もちろん免許は16歳で取得。将来はバイクに関連した仕事に就くと決めた。

時は流れスズキのエンジニアとなった。タイヤを路面に対していかにスムーズに動かすことができるかといった足回りの設計に従事する傍ら、運転好きが高じて国際B級ライセンスを取得していた。上司からは「設計かプロか、1本に絞ったほうがいい」と言われていたが、プロになる腹積もりだった。しかしとある試合でジャンプに失敗、両膝のじん帯を負傷し選手生活に終わりを告げた。それからはエンジニアとしての腕を上げていく日々だった。

職場が変わり設計から市場調査などを行う企画も経験した。車のコンセプト決めから携わり、「やっぱり車は初期段階を考えるのが一番楽しい。量産化の段階になると制約がでてくるから」と今の状況を重ねた。FOMM(First One Mile Mobility)を起業したのは2013年50歳の時。環境負荷の少ない車・EV車をつくりたい、短距離の移動でも車を運転することが億劫にならない車、そして「水に浮く車は絶対ウケる」とずっとあたためてきたコンセプトを実現するには起業するしかなかった。水に浮く車は、2011年東日本大震災の映像を見て「私は逃げない」という高齢の母の本音を解決できるかも、とより思いを強めた。逃げたくても足が悪くて逃げられない、周囲に迷惑がかかるからと諦めざるを得ない人たちも救えるかもしれない。

製造業を起業するということ

本当は中国で同事業を行いたかったがタイを選んだ。今思えばこれも縁だと感じる。「多くの方に支えていただきここまで来ました。ベンチャー企業は常に資金繰りが課題であり、もう無理かもしれないと思ったことも一度や二度ではありません。登記した日は『無事に登記できました、FOMMの誕生です。創立記念日おめでとうございます』と連絡を受け一人でお祝いしているところに『投資を決めていた先方がやっぱりやめると言っています』と連絡が入り、数時間で天国から地獄に落ちました」。

近年ITの起業が多くみられるが、製造業はITと違い開発費に多額の費用が必要であり、資金繰りは死活問題に直結する。創業から数カ月は資料作成とプレゼンに明け暮れ資金調達を進めた。そんな中生まれた縁をはじめ、様々な縁でようやく量産化までこぎつけた。

「来年1月には、お客様へ引き渡しができる予定です。今後はタイの皆さんにかわいがっていただき、ゆくゆくはここから輸出も行っていきたいですね。タイで製造することで雇用が生まれ、経済環境にも貢献できたらと思っています」。水害、環境問題、経済活動、様々な問題に貢献する車が公道を走る日が待ち遠しい。


「バンコク国際モーターショー2018」に出展したコンセプトカーはベストコンセプトカーアワードを受賞

株式会社FOMM
http://www.fomm.co.jp

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