サシン経営大学院教授陣に聞くアセアンに求められるリーダー像とは

新たな価値感を持った、アセアンの指導者を育成タイ人事委員会、リーダーシップ開発プログラムを実施

タイの公務員制度や人事管理政策に関する助言と勧告を内閣に行う首相府の外局、タイ国政府人事委員会(CSC)は3月23日~4月3日の間、バンコクなどでリーダーシップ開発プログラム「ASEAN New-Wave Leadership Development program」を実施。タイは過去10年にわたり、アセアン地域での将来の指導者の育成を目的に、アセアン10ヵ国から中間管理職の公務員を招待しており、今年は45歳以下の30人が参加した。

AEC(アセアン経済共同体)設立で変わる状況に対応するリーダーのあるべき姿とは何か。創造力に富み、コミュニケーションに長けた人材が求められている。

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アドバイザーとして同プログラムのカリキュラム内容の企画を担当した、サシン経営大学院のシリユパ・ルンルエンスック准教授は、「AEC時代に備え、将来の指導者となるべく、優秀な人材に経済・政治・社会・管理の分野で経験を積んでほしい。域内の公務員同士がネットワークを構築し、適切に協業すればよい結果が生まれる」と述べた。

一方、ピヤチャート・ピロムスワッド講師は2つの懸念材料を挙げた。アセアンの強みは、人口の多さと中間層の拡大で高まる購買力だが、経済の発展度合いが各国で異なり、特に所得格差が懸念される。もう一点としては、到来する高齢化社会を指摘した。「先進国以上のスピードで高齢化が進展しており、特にタイとシンガポールが際立つ。高齢化社会に突入する時期の社会・経済の発展度合いと所得水準が、先進国のそれと比べるとかなり低い。この2つの課題を認識してもらいたい」と強調。

また、参加者の視野を広めるため、「アセアン諸国に大型投資を行っている日本の声を聞いてほしい」と同大学院日本センターの藤岡資正所長を講師として招いた。日本のさらなる貢献にも期待を寄せており、日本が高齢化社会に対応するなか、どのように後継者を育ててきたか、アセアンは今後どのように準備するべきか、ヒントを伝えることで有能な人材を継続的に供給することが可能となる。

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シリユパ准教授は、「日本はアセアン諸国へ30年以上にわたり大型投資をしてきただけでなく、多くの日本企業が現地化を重視している。その取り組みはアセアン諸国に歓迎されている」。ピヤチャート講師は、「産業構造の高度化のノウハウを、安価な労働力・多くの人口を抱えるこの地域に紹介してほしい。日本とアセアン、GMS(大メコン圏)で協調戦略を取り、相互利益を得る関係を構築することが望ましい」と期待を示した。

サシン経営大学院日本センター藤岡資正所長が見据えるアセアン

リーダーシップ開発プログラム「ASEAN New-Wave Leadership Development program」内で、サシン経営大学院日本センターの藤岡資正所長は“日本―アセアンのビジネスと貿易見通し”について講演を行った。

アジアはここ10年間で経済規模で60%以上の成長を遂げている。その多くが、新興アジアと呼ばれる国々によってもたらされている。このまま、経済成長が続けば、2020年には、アジア新興国と開発途上国の合計の経済規模はEUと並ぶことが予測され、世界の経済成長を牽引する存在になる。そのための鍵は、アジア市場の着実かつ戦略的な拡大にあると論じた。

タイは地政学的に優位な位置にある。タイと近隣国などのいわゆるGMSで2.3億人、アセアンで6億人、そして10億人以上を有する中国、インドへと繋がっている。この市場に日本は知識や技術、デザイン、アイデアを注ぎ込み、タイ近隣国では労働集約型の製造を行ってタイで製品化する。それぞれの場所で産業クラスターが形成されていき、経済が発展、部品や製品の輸出入に加え、“ヒトの繋がり”もお互いにリンクしていく。これがアセアン各国の経済格差を利用したボトムアップ・プラスサム型のタイ+1の理想型であるとまとめた。

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