バンコク不動産投資

「木を見て森を見ず」で失敗するな! バンコク不動産投資最新動向

第19回 「木を見て森を見ず」で失敗するな!

「木を見て森を見ず」

これは英語のことわざの「You cannot see the wood for the trees.」からきているのだが、“木の詳細だけ調べても森の実態はわからない”という意味だ。そして、これはバンコクの不動産市場にもそのまま当てはまる。

バンコクのコンドミニアム市場は、東京や大阪のように中心部が上がれば、次はその周辺が値上がりしていき、最後は地方都市にまで波及して、結局はみんながウインウインで終わるという今の日本の不動産市場で起こっているような構造にはなっていない。典型的な例がバンコクCBD(中心部ビジネス街)の高級住宅地である。

シーロム、サートン、セントラルルンピニ、そしてロアースクムビットと呼ばれるエリアは常に脚光を浴び、地価の上昇が速い。調査会社のネクサスプロパティの発表によると、過去7年間のアソークからトンローの平均地価上昇率は年率19%と群を抜くとのことだ。当然、新規プロジェクトの売出価格も同様に急上昇していく。

一方で、それ以外のダウンタウンやサブアーバンのコンドミニアムの多くは期待するほどには値上がりしてないし、建物劣化による減損でむしろ価格が下がっているところもある。そんな市場特性の中では、CBDや人気の高いミッドタウンフリンジで投資することが最も投資効率が高い。

しかし、だからといってCBDで有名デベロッパーのブランドプロジェクトに絞り込んで、そのクオリティ、スペック、デザインや間取り等を念入りに検討してもまだ片手落ちなのである。著書でも書いたが、海外では必ずデベロップメント・パイプラインを調べなければならないし、それを怠ることがまさに「木を見て森を見ず」である。

そのプロジェクトがどんなに優れていても、近い将来、同等の競合物件が供給ラッシュでたくさん出てくると、おそらくその物件はマーケットのストレステストに勝てない。つまり、しばらくは値上りしないし賃貸に出すのも容易ではない。少なくとも、新規供給が一巡し、供給された物件が市場に吸収され、再び需給がタイトになるまで値上がりのスピードは遅い。今のトンロー周辺がそうだ。30万バーツ/㎡以上もするスーパーラグジュアリー級コンドミニアムが続々と売り出された結果、マーケットがこれについてこれずに売れ行きは芳しくない。

不動産投資はIRR(内部収益率)

投資は時間との戦いでもある。これをTime Value of Moneyというが、機関投資家はいつもこれを重視する。物件価格が2倍になるのに5年かかるのと10年かかるのでは投資効率が全く違うからだ。今のトンローの高額プレビルド物件は投売りの安値ででも買わない限り、その時間的投資効率が悪い。

従って、純粋な不動産投資をしたい人には、今の大量供給を一度吸収しなければならないトンロー通りを買うことは勧めない。不動産投資のキーワードであるIRRが伸びないからだ。むしろ、同じく人気のあるCBDなのに、用地不足で新規供給がなかなかできないアソーク駅前のようなところこそ狙うべきなのである。

2017年の大量供給は安値買いのチャンス

下のグラフはコリアーズインターナショナルの最新資料であるが、第3四半期が終わった9ヵ月間で約43,000ユニットが売り出され、ここ数年間で最大の大量供給になっている。特に今は各デベロッパーが売れ行きの悪い郊外からダウンタウンに開発をシフトしているので、バンコク都内のコンドミニアム市場ではかつてないほどのストレステストが始まっている。

これがバンコク都内のコンドミニアム市場に相当な影響を及ぼすことになり、今後、竣工した物件を引取れずに投売りしたりキャンセルする投資家が多くなるのではないか、とコリアーズは予想している。つまり、これからが我々にとって優良な物件を安く拾えるチャンスということでもある。


藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコクコンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。

連絡先:087-481-9709
bkk.condostory@gmail.com

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