バンコク不動産投資

元外資系投資銀行アセットマネジャーが分析する! バンコク不動産投資最新動向

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第2回 プレビルド投資には金融手法を使え!

「メガバンクのXXX銀行からノンリコローンのタームシートが出てきましたが、LTV80でスプレッド400ベイシス、DSC1.2、アモチは20年です」。
「それじゃIRRもマルティプルもアンダーライティングに届かない。もっとハイレバにしてLTVでなくLTPで85、350ベイシス、DSCは1.1で25年のアモチでレンダー交渉頼む」。
業界関係者でなければ何のことか分からないと思うが、こんな会話が投資銀行の不動産部門では頻繁に交わされている。こういうのを聞くと、最近の不動産は金融かと首を傾げたくなるが、今の不動産投資にとって金融手法は無視できないツールであり、証券化や高いレバレッジを使っての高効率投資が機関投資家には求められる。
しかし、個人投資家はプロが使うこの金融手法を利用できない。節税のための証券化もできなければ、ノンリコースローン(非遡及型融資)を出すレンダーもいないからだ。ならば、バンコクで不動産投資をする日本人投資家も何も打つ手がないのかというと、実はそうでもない。
タイでは、個人がデベロッパーの開発リスクを引き受けて完成物件を先物買いする、プレビルドというコンドミニアム投資が主流だ。さらに、外国人がコンドミニアムを買う場合、タイ国内で資金調達することはできない。全額海外からの外貨送金による購入が原則だからだ。従って、タイ人のようにタイの銀行からローンを借りてレバレッジをかけることも不可能。
では 、どうやれば金融手法を使ってハイリターンを追及できるのか、その1例を挙げてみる。
実は、バンコクでは8%固定利回りの投資信託を買うことができる。これは、ファクタリングを国際的に行っている投資信託なのだが、例えば、ナイキがスポーツウエアをインドネシアの工場に生産委託し、その支払いとして約束手形やL/Cを振り出す。受け取った現地企業はこれら売掛債権を現金化するために、金融機関に持ち込むのだが、この時の割引料がこの投資信託の収入源である。
一方、CBDの大型コンドミニアムプロジェクトは竣工までに4年位かかるものが多く、ダウンペイメントは物件価格の25%。つまり、プリセールで3,000万円の物件に投資した場合、年間200万円から250万円(約8%)のダウンペイメント支払いが3年以上続く。
そこで投資家はプリセール物件購入と同時に3,000万円でこの投資信託を買う。すると、3ヵ月ごとに60万円の配当が海外からバンコクの銀行に外貨である日本円で送金される。デベロッパーがここからダウンペイメントとして毎月引き落とせるようにアレンジしてやれば、投資家は何もしなくとも、海外から送金された外貨で購入代金を支払う、という購入要件を満たせるのだ。
つまり、マイナス金利の日本では寝かせておいても何も生まない3,000万円だが、バンコクでは、プレビルドと投資信託への二重投資により、高配当とゲンガムライ(竣工前転売益)のダブルチャンスをもたらす生きた金に生まれ変わるのだ。
ただし、不動産投資に金融商品投資を組み合わせた複合投資は、その構造が複雑になるほどリスクも高くなることを忘れではならない。(注:この原稿を出した後、当該ファンドは新規の募集を中止したが、類似の投資信託はほかにもある)。

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藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコクコンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。

連絡先:087-481-9709
bkk.condostory@gmail.com

 

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