バンコク不動産投資

元外資系投資銀行アセットマネジャーが分析する! バンコク不動産投資最新動向

第14回 タムレ・トーングとタムレ・サカヤパープ、どっちに投資する?

タムレ・トーング(ทําเลทอง)という業界用語がある。頻繁に使われるので、不動産業界に縁のないタイ人でもこの意味を知らない人はまずいない。直訳すると、“黄金の土地”だ。英語ならもっと直接的にベストピッチとかベストロケーションというし、日本語なら一等地だ。ヤワラートに建ち並ぶ金行を見たことがあれば納得できると思うが、タイ人は非常に黄金が好きな国民だからだろうか、トーング(金)という言葉をこんなところでも使う。

バンコクのコンドミニアム市場で代表的なタムレ・トーングは3つだ。シーロムとサトーン、次にラーチャダムリ―、ランスアング、ウィタユの3つのタノン(タイ語で“通り”の意味)に代表されるセントラル・ルンピニ、そして日本人に絶大な人気のプロンポンとトンローだ。
中でもトンロー通りはバンコクの表参道、タイ人にとっても憧れの土地。本誌2017年3月号でも書いたが、今、トンローでは30万バーツ/㎡を超えるスーパーラグジュアリー級プロジェクトが目白押しでやや過剰気味だ。それでも最近、プルクサ―がここで売り出したプロジェクトもすぐに完売となった。

一方、タイ語にはもう一つ、タムレ・サカヤパープ(ทําเลศักยภาพ)がある。“将来発展する土地”という意味だ。タムレ・トーングに比べて地価もまだそれほど高くないし、ややリスクはあるものの、期待通りに発展すればリターンも大きい。不動産コンサルタントとしてクライアントと面談していると、有名なトンロー通りで投資したいという人も多いのだが、ちょっと勘違いしているのではないかと思うことが多々ある。
2,000万~3,000万円の予算でトンロー通りのハイライズコンドに投資したいというのだが、今の円安では現地通貨で600万から900万バーツにしかならない。それに対し、中古でも空室リスクの低いクアトロとかHQのラグジュアリーコンドで、賃貸に有利な内装にお金をかけたユニットを買うとなると、25万バーツ/㎡だ。しかも、トンロー通りで30㎡台などという狭小物件を買っても仕方がないので50㎡は欲しい。すると、1,250万バーツ、日本円で4,000万円以上になる。

だから筆者はこうアドバイスする。「5,000万円位の予算がなければトンロー通りで無理して投資はしない方がいいのでは」。そして、こう続ける。「トンローで2,000万~3,000万円の投資がしたければ、むしろ駅の南側が狙い目です」。
何故か。昨年、本誌2016年10月号で詳しく書いた通り、“タムレ・サカヤパープ”、これから発展する可能性の高い土地だからだ。例えば、中長期的にはスクムビット通りのプラカノンとラーマ3通りを結ぶグレイライン・第2フェーズが計画されている。彼らのウェブサイトを調べると、新駅をソイ36とラーマ4の交差点に作るらしい。もしそうなれば、わずか1キロ程のソイ36は2つのスカイトレインの駅に挟まれて利便性が各段に良くなる。
また、つい最近、大手のアナンダーがソイ36のトンロー駅から500メートル以上も離れたところにアイディオQの開発を発表した。アシュトン・モーフに続き、今回も駅からかなり離れた大型プロジェクトだ。詳細は未発表だが、公開空地を提供する総合設計を導入するのだろうか。本来ローライズしか建たないはずのソイ36に大型高層コンドミニアムを開発するらしい。つまり、これだけ駅から離れても販売に自信を持っているということなのだろう。

今、開発用地がますます払底するトンロー通りでは、ベストピッチの実勢価格が200万バーツ/ワーを超えると噂されている。一方、トンロー駅南側では、ローライズになるが70万バーツ/ワー前後で用地取得できる。ここに注目するデベロッパーはもっと増えるはずだ。そして、投資として考えた場合でも、予算に限りのある投資家にとっても絶好のチャンスだ。少なくともここで投資して、将来キャピタルロスを出すリスクはまずないと筆者は思うのだが…。


藤澤 慎二
前職はドイツ銀行の国際不動産投資ファンド、RREEFのシニア・アセットマネジャーで米国公認会計士。現在はバンコクに在住し、自身のブログ「バンコクコンドミニアム物語」(http://condostory.blog.jp)で、バンコクの不動産マーケット情報を発信している。
連絡先:087-481-9709
bkk.condostory@gmail.com

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