Book Review 社長が紹介する、一冊　Spade design Co., Ltd. 松本 巌

『初秋』ロバート・Ｂ・パーカー著　菊池 光訳　ハヤカワ・ミステリ文庫　311B

清々しいほど格好良い！　ハードボイルド小説に新風を呼んだ傑作

アメリカの推理小説作家、ロバート・Ｂ・パーカーによる『スペンサー・シリーズ』の第７作目。探偵スペンサーが依頼を通じて出会った無気力な一人の少年を、たくましく自立へと導くひと夏を描いた作品で、1982年の邦訳発刊以来、日本ではもっとも人気のある傑作として知られている。メインストーリーの狭間に主人公の私生活の描写を組み込むことで、事件の解決が主筋というのが定番だったハードボイルド探偵小説に革新を起こした。
10代で本書に出会ったという松本社長。それまで読んでいたレイモンド・チャンドラー
の『フィリップ・マーロウ』など古典的な探偵小説とは一線を画す作風と、スペンサーのハードボイルドな男性像に衝撃を受けたと話す。
「物語は知的で美意識が高く、繊細な人物であるスペンサーが、生きることに無関心な
少年ポールとボストン郊外の森で一緒に小屋を作り、体を鍛え、料理を作り、その中で自
分自身を頼りにすること、自分以外の物事に必要以上に影響されない自立心を教えます。
生きる誇りと慈愛に満ちたスペンサーの姿は、いくつになっても自分のなかにある、弱さ
や甘さといった少年の部分の対極にあります。多少気恥ずかしくなるような格好良さに惹
かれるのは、自分で決めたルールを守り通す、彼のストイシズムとも言える強さへの憧れ
なのでしょう。読んだあと、思わず背筋が伸びてやる気が出るエンターテインメント作品
です。男性なら一度は読んで損はないと思います」。