【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

インドネシアの自動車市場の概況とxEV政策動向(後編)

インドネシアの自動車市場の概況とxEV政策動向(後編)

輸出拠点化の展望

近年、全体市場が伸び悩むなかで市場を下支えしているのは、市場の約55%を占めるMPV(図中の4x2に分類されるセグメント:多人数乗り多目的車)である。

当セグメントは元々トヨタ・キジャンやイスズ・パンサーなどアジア・ユティリティーカー(AUV)として80年代及び90年代初頭に開発された商用車であり、一般の乗用車(セダン)が25%であるのに対して、現在は乗用目的に使われているものの、1,500cc以下の場合10%の低税率が適用されている。MPVの主力モデルであるトヨタ・アバンザ、ダイハツ・ゼニア、ホンダ・モビリオなどが市場を牽引している。

昨年、三菱自動車が発表した3列シート7人乗りのExpanderは、斬新なデザインと価格を200万円以下に抑えたこともあり、今年は受注が10万台を超え、依然としてMPVの人気が根強いことを印象付けた。ただし、これまで構内で発売されているMPVのモデルの多くは、国内市場を対象に開発されたことから海外市場に合致しない仕様となっており、輸出市場は限られている。LCGCも同様であり、タイのエコカーの基準がEuro4・5であるのに対して、LCGCはEuro3基準である。

インドネシア政府としては、輸出拡大に貢献できる車種(セダン等)の生産の奨励や、国内環境・排出基準の国際基準(Euro4)への引き上げを検討しているが、急激な政策変更に対して業界は対応に苦慮している。更に、完成車の現地調達は80%を越えているが、部材の多くは輸入に依存しており、ネットの現地調達率は50%を下回り国際競争力がない。インドネシアの年40~60万台を目標とする輸出拠点化の実現には、まだ多くの課題を抱えていると言えよう。

Low Carbon Emission Vehicle(LCEV)政策

インドネシア政府は、LCGCに続く政策としてLow Carbon Emission Vehicle(LCEV)政策を打ち出し、自動車への新たな投資の引き込みを狙う。LCEV 政策はハイブリッド、EV、CNGなどCO2排出量の少ない車に対して税制優遇する政策だが、EVを中心に奨励するxEV政策との整合性などの課題から、具体的な政策は2018年5月現在まだ発表されていない。

LCCGに続く自動車政策は、今ペンディング状態にあり、未確定なところも多いが、次稿ではxEV政策の概要、課題について触れる。

(ArayZ8月号に続く)


Note: Affordable Energy Saving Car=LCGC (Low Cost Green Car)
4×2=MPV with 2well drive
出所:GAIKINDO(インドネシア自動車工業会)

執筆者:野村総合研究所タイ


マネージング・ダイレクター
岡崎啓一


シニアコンサルタント
山本 肇

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