【連載第46回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記

シーポム社編(2)
「引き受けた依頼」

(前回までのあらすじ)
〜“人材紹介の上山さんから急遽今日あって欲しいと連絡をいただいたシーポム社の山雲さん。なんでも決算を締めるこのタイミングでタイ人経理マネージャークラスのスタッフが辞めそうだということで、臨機応変の対応を求められることになりそうだが…”〜

 

話の大筋は上山さんから概ね聞いていたのでそれほど驚きはしなかったものの、詳しく聞いているとシーポム社については親会社の連結決算報告の作業も連結決算シートより一歩進んだ連結決算用のソフトをカスタマイズしたものをイントラネットで使っていた。≪※1≫

この入力業務もそのスタッフが対応していたので問題としては確かに深刻な状況だった。しかもそこだけ切り取って考えても、どういったレベルが要求される業務かは聞いているだけでは想定しづらい。それに聞けば聞くほど、現場スタッフ間でギスギスしている状態になっていそうだ。どこに依頼しても受けた先が億劫に思うような案件だった。
「分かりました。何とかお手伝いしましょう」。億劫な状態であればあるほど、やり抜いた時に感謝される仕事になるのと、やはり目の前で困っている人をほっておけない気質から2つ返事で答えたのだった。それもこれも直感的に山雲さんは実直かつこの先も気が合う人だなという心象を受けたからでもあった。

どんなに難しい案件だろうが乗り越えられるかどうかの分かれ目にもなるのは、結局自分の直感と依頼人との相性もあると普段から思っている。今にして思えばその時にこれも縁だろうなと強く感じられたことが話を引き受けた大きな理由だった。≪※2≫

そうと決まれば話は早い。というか迅速に対応する必要がある。早速社内で一番信のおける自分の右腕のタイ人シニアマネージャーを中心に現場に入りながら、まずはこちらで引き取る内容の精査に入った。シーポム社で辞めそうだという経理スタッフのメイさんはマネージャーではないもののそれに準ずる内容の業務を担っていて、これは想定通りだったが、彼女がいないと途端に経理が破綻する状況だった。その後の話の中で、決算処理対応を終えてから退社することで話がついているようだった。その間に我々のほうでこれまでメイさんが多忙で未着手のまま数ヶ月放置されていた連結決算システムの入力を、急遽対応することで切り分けをした。

こうして順調な滑り出しのように思えたが、油断は出来ない。考えないといけないことが山積みだった。 (続く)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

≪※1≫
通常は親会社の経理部門で対応することが多い連結実務対応だが、タイの現地法人で連結実務を対応している場合も数は少ないがあることはある。中でも今回のケースのように入力を機械的にできるように最初からイントラネットのような環境を構築して対応する場合と、単純に指定の連結パッケージファイルに直接入力する場合の2種類がメインと言っても良い。今のところ外部の会計事務所を使う場合は、連結パッケージファイルでの直接入力などでのサポートが一般的のようだが、余力のある会社は習熟した現地スタッフに入力してもらう場合もある。≪※2≫
特にコンサルタント案件においては言うまでもなくお互いの人間関係が重要となる。依頼するクライアント側に決して上から目線でのレクチャーをするわけではない。あくまでもパートナーという形で寄り添える関係がベストだ。
一方単純な業務委託や請負的なものになればなるほど確かに人間関係でいうとやや希薄にならざるを得ないが、それでも重要である。一定の信頼関係がないとちょっとしたミスコミュニケーションが後日致命的になる事もありえるため、受ける側としては進捗度に応じて常日頃から積極的に報告などを怠らず、依頼する側も放置ではなく、ましてや業者に依頼するという目線での任せっきりの姿勢ではなく、ある程度積極的に関与することでより円滑に業務が進むことになる。

 

Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke), Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
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事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表:日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadano@aporter.co.th
http://aporter.co.th/


但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。
本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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