特集 2019.01月号

「ガラスの天井」を打破する タイ人女性

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~社会進出を後押しする風土が定着~

女性の社会進出が非常に進んでいるタイ。生活していると、女性が活躍する土壌が整っていることを実感することが少なくない。早朝の電車(高架鉄道BTSなど)は、通勤・通学する女性で混み合い、職場では元気なOLの声が響く。女性の地位はビジネスの世界で確立されており、大手企業のトップが女性というのも珍しくない。一方で、女性が能力を依然として発揮しづらい日本。「男女平等先進国」のタイと、どう異なるのだろうか。
今回はタイ人女性の社会進出度を調査・分析するほか、地位向上を阻む「ガラスの天井」を打破して活躍する女性経営者らを取り上げる。

企業における経営幹部の女性比率や就業率は高く、国際機関や民間企業の調査で、タイは必ず上位にランクインしている。国際会計事務所のグラントソントンが2018年3月に発表した女性の社会進出に関する「国際ビジネスレポート(図表1:中堅企業における経営幹部の女性比率)」によると、タイ(42%)は前年から11%上昇し、フィリピン(47%)とインドネシア(43%)に次いで世界35ヵ国中第3位で、ASEAN平均の39%を上回った(16頁にインタビュー記事)。

この背景には、賃金の格差や教育を受ける機会の不均等があまりなく、基本的に女性が活躍できる環境が整備されていることが挙げられる。エンジニアなど理系の職業は依然、男性で占められるなど、職種での差異はあるが、最近では女性の顔もちらほら見られる。

既婚者は子供を育てながら仕事をするのが一般的で、子供を両親やお手伝いさん、保育園に預けてのびのびと働いている。経営幹部や管理職に登用される女性も少なくなく、恵まれた職場環境の下で輝いている。

一方、日本はわずか5%と対象国中で最下位。同調査が開始された2004年の8%を下回る数値で、全体の平均値がわずかながら改善傾向にある中で、世界の動きとは相反する現状が明らかになった。

さらに経営幹部に一人も女性がいない中堅企業も、日本が69%と最も多く、タイ(17%)とASEAN平均(16%)を大幅に上回った(図表2)。

女性が輝く社会へ

日本では女性の登用促進を目的に「女性活躍推進法」が2016年4月から施行されており、20年までに指導的地位に占める女性の割合を30%とする目標を掲げている。帝国データバンクが18年8月に発表した「女性登用に対する企業の意識調査(2018年)」によると、女性管理職(課長相当職以上)の割合は、前年比0・3%上昇したが、平均7・2%(役員は平均9・7%)と低水準。

女性の管理職がいない企業は48・4%とほぼ半数を占めたが、今後割合が増えると見込む企業は24・6%、「社内人材の活用・登用を進めている」企業は43・1%と4割を超え、緩やかに進んでいる様子が伺える。

社会進出度の比較

米クレジットカード大手マスターカードの「女性の社会進出度調査」は、社会経済的観点から見た女性の水準を数値化した(図表3)。3つの項目から構成される指数のうち、「リーダーシップ」は、「事業所有」、「企業管理職」、「政府機関管理職」の下位項目からなり、アジア太平洋地域14市場の女性の比率を数値化したもので、指数が低いと男女平等の取り組みが不足していることを示している。

タイは2011年に初の女性首相としてインラック氏が就任したあと、大きな伸びを見せたが、14年のクーデーターで失脚すると依然の水準に戻った。企業管理職の指数は高いが、政府機関管理職は日本と同様、圧倒的に男性優位となっている。日本は全項目でほぼ横ばいで推移しており、依然として厚い壁に阻まれていることを示している。

同カードが2018年3月発表した「女性起業家指数」ランキングで、世界57ヵ国・地域中、タイは15位(前年12位)、日本は46位(同45位)。1位は前年に続いて、女性が首相のニュージーランドだった。日本が順位を落とした理由として、新たに起業した女性の数が半数から4分の1に半減したことに加え、社会・実業界で女性の起業家が男性よりも劣っていると認識されていることを挙げている。成功した女性の起業家は「スーパーウーマン」として称賛を浴びる一方、「普通の女性」と権力を持つ男性の両方からの脅威と見られ、近づきがたい存在になっているという。

タイは行動率の低下で後退した。同指数は「女性の起業状況」「知識・金融サービルへのアクセス」「起業家を支える環境」の3部門を柱に評価。女性の起業を取り巻く環境は、上位10ヵ国のうち、フィリピンを除く全てが先進国であった(図表4)。また、「女性オーナー」ランキングでは、タイが25位、日本が45位だった(Women’s Advancement 2018)。

男女平等こそが成長エンジン

世界経済フォーラム(WEF)は2018年12月、各国のジェンダー不平等状況を分析した2018年版「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)」を公表した。対象は世界149ヵ国で、格差が少ない1位から4位までをアイスランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北欧諸国が占めた。

同指数では、ジェンダー間の「経済活動への参加・機会」、「教育的達成度」、「健康と生存」、「政治権限」という4種類の指標を基に格差を算定し、ランキング付けされている。

日本は110位と前年から4つ順位を上げたが、男女平等があまり進んでいないと評価された。タイも73位と75位から浮上した(図表5)。アジアからはフィリピンが、唯一トップ10入り(8位)し、ラオスが上位(26位)にランクイン。中国は103位、韓国は115位だった。

日本は「教育的達成度」分野では、読み書きと初等・中等教育で1位だが、高等教育での男女間が大きく総合で103位に甘んじている。「経済活動への参加・機会」は117位。一方、タイは22位と一定の評価を得ているが、 「教育的達成度」では初等と読み書きの評価が低く、日本とは逆の傾向にある。

マッキンゼー・グローバル研究所によると、男女平等が進めば、アジア太平洋地域のGDP(国内総生産)は2025年までに、年間4・5兆ドル(約500兆円)拡大する(図表6)。成長著しい同地域だが、多くの国で女性が不平等な待遇で働いており、社会や職場でのさらなる取り組みが必要と提示する。子育てに専念し、家庭を守るのが女性の役割といった考え方が根強く残っており、労働人口の不足による経済的な損失など、様々な課題に直面している。

GDP(国内総生産)貢献度(2016年)は世界平均で36%。タイは40%と中国、カンボジア、ベトナムに次いで、18ヵ国中4位にランクイン。日本は33%で12位に甘んじている。一方、労働力に占める割合はタイが46%、日本が43%と肉薄している。タイの国内上位5大学の女性率は世界でトップの62%。全大学でも共に60%のマレーシアとスウェーデンに僅差で3位(59%)だった。

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