ビジネス・経済 2018.06月号

アイシン精機グループ―AT大増産に2,000億円投資

国内・アジアなど1,320万台

アイシン精機グループが、自動変速機(AT)の大規模な増産を決めた。日本や中国を中心に約2,000億円を投じ、2020年度の全世界での生産台数を17年度比約3割増の1,320万台に増やす。一方でATは電気自動車(EV)には使われない。地域ごとの完成車メーカーとの合弁工場やライセンス供与、またEV向け駆動システムの開発などで将来のAT需要減を見据えたリスク分散も図る。

「市場のEV比率が3割程度であれば、ATベースの駆動装置の需要は変わらない」。アイシン精機の伊原保守社長は自信を示す。ATはEVには使われないが、駆動力にエンジンとモーターを併用する簡易的なハイブリッド(HV)駆動システム「マイルドHV」には使われる。またモーターのみで駆動できる「ストロングHV」向けにも、従来のATにモーター一つを組み合わせた「1モーターHV」を開発中だ。

世界の車市場全体の拡大も考慮すると、EVの販売比率が、世界で30年に3割に達したと仮定しても、既存のATをベースとした駆動製品の市場は大きく変わらないと同社は見ている。2,000億円の巨費を投じるATの大増産の背景には手堅い需要見込みの裏打ちがある。

ATの増産は、子会社のアイシン・エィ・ダブリュ(AW)を中心にグループ全体で進める。まず日本では、岐阜県瑞浪市にATの新工場を稼働。18年末からAT部品の加工を開始し、19年2月には前輪駆動(FF)車用の8速ATの生産を始める。19年中に追加で能力増強を実施し、同工場の年産能力を70万台とする。このほかアイシングループの既存工場も増強し、国内でのAT生産台数は20年度に960万台(17年度比17%増)となる。

一方、アジアでは中国とタイでATを増産する。中国ではアイシンAWが広州汽車集団系、浙江吉利控股集団系とそれぞれ6速ATの合弁工場を20年に稼働する。両合弁会社にはアイシンAWが60%、合弁相手が40%出資。天津市と河北省唐山市の既存工場も増強し、中国でのAT生産を20年度に240万台(同約2.7倍)に高める。タイの工場も能力増強し、ATの年産能力を30万台とする計画だ。

中国2社との合弁会社設立では、先々のAT需要の減少リスクを車メーカーとの間で分け合う判断もあったとみられる。アイシン精機首脳は「先々のAT投資には危険もある。中国市場の情報を収集する上でも合弁にはメリットが大きい」と話す。

AT比率の高まる欧州では、アイシンAWがフランスのグループPSAにFF車用の6速ATの生産ライセンスを供与。PSAは20年以降に同国北部バレンシエンヌの工場で年30万台のATを生産する方針だ。

“EV時代へ布石”

EV時代への布石も打つ。プラグインハイブリッド車(PHV)向けの駆動システムを高出力化し、システム制御を追加したEV向け駆動ユニットも開発中。「電動化に全方位で対応できる唯一のパワートレーンメーカー」(伊原社長)を目指し、競争力を高めている。

岐阜県瑞浪市に整備中のアイシンAWのAT工場

※記事提供・日刊工業新聞(杉本 要 2018/5/16)

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