黒字化へブランド力向上/
工場増強・アジア各地に輸出
「市場の変化が激しいこともあり、工場づくりを“ジャンプ”して決めた」。サッポロHD傘下のサッポロベトナムの正脇幹生社長は、参入当時の様子を説明する。北米市場には1964年に参入しており、グローバル展開の一環でアジア市場の拠点を模索したという。
ベトナムは人口増加率が高いほか、ビール市場としても大きいため、将来性が見込めた。ちょうど国営たばこ会社がビール事業の合弁相手を探していたこともあり、サッポロとの事業の話が大きく前進した。
ベトナムでの事業は苦労も多かったという。サッポロは主にホーチミン市を中心として、営業に取り組んだ。競合は、サイゴンビールやハイネケン、タイガービールなどで、現地で無名のサッポロが市場に食い込むのは簡単ではなかった。
「2-3年はがむしゃらに動いた」―。正脇社長はブランドの認知率の獲得と消費者に飲んでもらうための仕組みづくりのため、広告やプロモーションなどに投資を続けた。こうした販促活動の結果により、ホーチミン市の日系料飲店などではほぼ100%近い認知率になっているという。15年にはベトナム事業を100%子会社化した。
一方で、課題も浮き彫りになった。ビールの飲用継続を得るための広告など大きな費用投下に対して、拡販しても採算が合ってこない。この赤字体質から、なかなか抜けられなかったという。17年度は、営業損益で前年度より縮小したものの13億円の赤字だった。
「認知の活動は終わった」。そう判断して黒字化に向け舵を切った。広告や販促物、人件費を削減。納入先も日系やインターナショナルレストランなどプレミアム感のある店舗を選別した。売上高は落としても、主力「サッポロ プレミアム」のブランド力を高める戦略だ。
これが奏功し、18年度1-6月期は営業損益がトントンにまでなった。通期見通しは赤字解消とはならないものの、1億円の赤字と大幅縮小する見込みで、来期以降の黒字化も射程にとらえている。
並行して営業力を強化していく。営業組織の人事制度改革などにより、個々の役割を明確化するとともにやる気を出せる体制を整えた。ビール工場の増強を踏まえ、アジア輸出を含め販売の拡大も進める。
※記事提供:日刊工業新聞(井上雅太郎2018/10/17)