日刊工業新聞

河村電器産業 ASEANで配電盤深耕

生産体制拡充、日系・現地企業に積極営業

受配電設備メーカーの河村電器産業(愛知県瀬戸市、水野一隆社長、0561・86・8111)が、東南アジア諸国連合(ASEAN)で生産体制を拡充している。新たにベトナムに進出して10月に生産を始めたほか、2016年に現地の同業を買収したタイでは生産性向上のため工場の全面改築を進めている。経済成長に伴い受配電設備の需要拡大が見込まれるASEANで、日系企業向けに売り込みを強めると同時に、現地企業への拡販も目指す。

ASEANには、河村電器産業の主要顧客である日系企業が多く進出し、工場の増改築も活発だ。また、商業施設やマンションの新設も増えており、受配電設備の需要は堅調に伸びている。そうした中、同社はASEANを中国に次ぐ海外展開の重点地域と位置付け、体制整備を急いでいる。

ベトナムには、全額出資の子会社「カワムラエレクトリックベトナム(KEV)」を設立。ドンナイ省のロンドウック工業団地に、敷地面積1,226平方メートルのレンタル工場を確保し、配電盤の生産を10月から始めた。日本の配電盤メーカーが全額出資により同国に進出するのは初めてという。

タイでは、現地メーカーを子会社化した「タイ・アイチデンキ(TAD)」(サムットプラカーン県)を構える。そこで生産する受配電設備の8-9割を、現地の日系企業向けに供給している。

TADは、KEVと生産面で連携する。TADでつくるキャビネットなどの部品をKEVに送り、KEVが配電盤を組み立てている。ASEAN域内での効率的な生産体制の構築を目指す。

TADは3棟ある工場棟の改築を段階的に進めている。目的は生産性の大幅な向上だ。これまでは、買収前の生産のやり方を踏襲してきたが、タイ人スタッフとの相互理解も進んできたことから、ライン生産を導入するなど抜本的に生産方式を改める。

このほどキャビネットなどの塗装を行う1棟目の工事が完了し、11月をめどに稼働する。ここでは、以前の溶剤塗装から作業環境に優しい粉体塗装に切り替えた。溶剤は作業に時間がかかる上、高品質に塗装するには熟練の技が必要。静電気で必要な厚さの膜を一度に吸着する粉体塗装を導入し「時間当たりの出来高を上げる」(早川智宏TAD社長)。

TADでは、顧客ごとの要望に応じた特注品の生産がメーン。「いずれは日本のように標準化を進める」(同)方針で、一連の改築で導入するライン生産方式によって量産化し、大幅な低コスト化、短納期化につなげる。

早川TAD社長は、こうした生産体制の改善と併せ「ローカル企業への販売促進もしていかなければならない」とする。特に商業施設やマンションは、現地の受配電設備メーカーが占めている市場という。今後は現地ゼネコンなどへの営業も積極化し、食い込みを図る。

TADの17年度の売上高は約8億6、000万円。早川TAD社長は「早期に2倍にしたい」と意気込む。

※記事提供:日刊工業新聞(岩崎左恵 2018/10/31)


生産性向上を目的に段階的に改築を進めているタイ・アイチデンキ

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