日刊工業新聞

京セラ―タイで太陽光事業2.5倍に

現地開発大手と売上高拡大/
ニーズに応えASEAN全体も視野

京セラが太陽光事業の展開をタイで強化している。現地の大手デベロッパーと組むことで、同国では2016年度に売上高が前年度比3倍に拡大。17年度はさらに、16年度比2.5倍に拡大する計画を進めている。ただ同事業は構造改革が進んだとはいえ、経営環境は厳しい。また、海外売上高比率は1割超にすぎない。好調なタイ市場で確実に稼ぐのと並行して、ソリューションビジネスへの転換を急いでいる。

「タイの税制優遇制度を利用することで、下期(17年10月~18年3月期)にかなりの案件が集中している」―。17年4~9月期決算の会見で、谷本秀夫社長は太陽光事業の戦略について前向きな見通しを示した。部品事業などの業績が好調だった一方で、太陽光を含む「生活・環境」セグメントの“事業損益”は約4億円の赤字となり、苦戦を強いられた。それでも強気な姿勢を崩さなかったのは、タイでの堅調さが一つの理由だ。

京セラは、タイの大手太陽光発電デベロッパーのSPCGと09年から連携し、タイに進出する日系企業を中心に販売を強化してきた。SPCGは京セラ製品のみを採用しており、現地でのEPC(設計・調達・建設)やO&M(運営・保守)でも豊富な実績を持つ。ソーラーエネルギー事業本部の池田一郎マーケティング事業部長は「京セラのブランド力とSPCGのバックアップという両輪があって、初めてビジネスになる」と強みを明かす。

タイでは、太陽光発電を導入した事業者に対する税制優遇制度があり、普及を後押ししている。また日本より日照条件が良いため、太陽光発電の採算性が高いという特徴もある。

ただ1年の半分が雨期のため、製品には高い耐湿性が要求される。京セラはその要求に十分応えた品質を提供し、その上で現地に精通するSPCGが顧客を支援する。この体制を強みに、今後はフィリピンなど東南アジア諸国連合(ASEAN)全体にも拡大を狙う。

だが依然として、太陽光を取り巻く事業環境は厳しい。日本国内では、売電価格の低下で事業の採算性自体が年々悪化。蓄電池などと組み合わせて自家消費ニーズを取り込まないと、展開は困難になっている。米国市場でも、中国製パネルが大量に流入したことなどにより、パネル価格が16年後半に急落。事業縮小を余儀なくされた。

そうした事態を受け、京セラは生産拠点を集約するなど大規模な構造改革を16年度までに断行。パネル生産の主力は現在、滋賀八日市工場(滋賀県東近江市)と中国工場(天津市)の2拠点になっている。赤字要因を減らして「止血」した段階で、タイでの販売が好調だからといって、すぐに拠点新設を検討するような状況ではない。

太陽光事業は今や、総合的なソリューション提供が不可欠。京セラも、人工知能(AI)搭載の家庭用エネルギー管理システム(HEMS)の開発や仮想発電所(VPP)実証事業への参画などに乗り出した。タイでの販売拡大と並行し、グループの技術を生かした新展開をいかに打ち出せるかが問われている。

※記事提供・日刊工業新聞(園尾雅之 2017/12/13)

SPCGによる太陽光パネルのシステム点検

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