日刊工業新聞

鹿島― 世界で開発事業を展開

アジアで大型案件着手/
長期保有・回転型 市場に応じ適用

鹿島は海外でオフィスや商業施設、住宅などの開発事業に力を入れている。アジア、欧州、米国でそれぞれの地域性や市場特性に応じた事業を展開する。海外事業のうち、建築事業は厳しい競争にさらされ、利益率が国内と比べて低いのがネック。だが、開発事業は一定水準の利益率を確保でき「海外事業の利益の源泉」(内田道也執行役員)という位置付けにある。今後も開発投資を増やす方針だ。

開発事業のスキームは二つに分けられる。一つは開発案件を長期保有して、賃貸収入などを得る手法だ。安定的に収益を得られる利点がある。主にアジアや欧州地域で展開している。

もうひとつは開発案件を建設後に販売し、得た売却益を開発案件に再投資する、回転型の手法だ。市場動向をうまく捉えることで、高収益を得られる可能性が高まる。米国を中心に展開している。両手法の適切な組み合わせが重要で「ポートフォリオを描いてバランスを取る」(内田執行役員)。

アジアでは大型の開発案件をいくつも手がけている。インドネシア・ジャカルタの「スナヤン・スクエア」プロジェクトは施設の開発・設計・施工・運営までを担い、一定期間後に所有権を移管する「BOT事業」で、2036年までの40年間、事業を継続する。同国政府から借り受けた19万平方メートルの敷地にオフィスや商業施設、アパート、ホテルを整備した。

15年にすべての施設開発を終え、現在は施設の運営・管理に移っている。投じた資金は現時点で「ほぼ回収できている」(同)と、今後の安定的な収益確保を期待する。
シンガポールでは、住宅・商業施設の複合開発プロジェクトに着手する。同国の新聞・出版大手、シンガポール・プレス・ホールディングスと折半出資の合弁会社が、都心から北東へ約5キロメートルに位置するビダダリ地区のうち、2万5,400平方メートルの開発地域を約900億円で落札した。600戸を超える分譲住宅や延べ床面積約2万7,000平方メートルのショッピングモールなどを整備する。

このほかにも、ミャンマーのヤンゴンでオフィスやホテル、商業施設からなる複合施設を開発する。BOT事業として最長で70年間、実施する。総事業費は4億ドル(約450億円)、延べ床面積は17万平方メートルを計画する。

鹿島は今後、アジアや欧州で、開発案件を売却して収益を得る回転型のビジネスを強化する。すでにポーランドとチェコでは、流通倉庫で土地を仕込んで開発し、売却した。世界的に拡大するネット通販を背景に、流通倉庫のニーズがある。

一方、米国では、開発案件の長期保有による賃貸収入事業にも力を入れる。その一環として、17年12月に賃貸集合住宅の開発・建設・運営事業を行う米フラワノイと同社の売買契約を結び、グループ傘下に置くことにした。同社は米南部を中心に、300戸クラスの中低層賃貸集合住宅の開発事業を軸にしながら、建設や賃貸、運営・管理までを手がけている。

ミャンマー・ヤンゴンでのオフィスやホテル、商業施設で構成する複合施設(完成予想図)

※記事提供・日刊工業新聞(村山茂樹 2018/1/31)

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