法務・会計・税務 2018.06月号

国際相続の対策ポイント

日本全国で相続対策サービスを展開する辻・本郷税理士法人のタイ拠点、Hongo Toyo Accounting Co., Ltd.の佐藤洋史 Managing Directorに、相続問題の対策ポイントについて伺った。

早期対策が節税の選択肢を増やす

今後も日本の相続税は増税が予想されます。相続対策は早期から取り組むことで、生前贈与、教育資金贈与信託、非課税枠を活用した生命保険、不動産の活用といった様々な節税方法が検討できます。ただ、日本の国税庁も抜け穴を封じようと常に税制を変えており、この対策なら絶対に大丈夫!と言い切れるものは正直なところありません。

金融情報自動交換制度が施行されたことで、税務当局は日本人が海外に保有する金融資産まで追えるようになりました。また、以前までは被相続人と相続人が海外に5年を超えて居住している場合、課税対象は日本の財産のみで海外の財産は非課税でしたが、現在は居住年数が10年超に延び、要件が厳格化されています。

一方で法人税率の引き下げや事業承継対策税制の改正など、法人の事業承継については手続きがスムーズになってきています。相続は時に、「争族」とも表されます。相続人が複数いる場合は、被相続人の生前に、会社の後継者に株式を譲渡するなど対策を取ることが、兄弟間の争いを未然に防ぐことにもつながります。節税も重要ですが、残された遺族が揉めないための対策もまた重要なポイントではないでしょうか。

「相続」が「争族」にならないために

日本の民法では、法定相続人の優先順位が「配偶者と子」→「配偶者と直系尊属」→「配偶者と兄弟姉妹」と決められています。トラブルに発展するケースが多いのは、被相続人の「配偶者と子」が相続する一次相続よりも、配偶者が亡くなった後の二次相続において子供間の、特に(法定相続人ではない)子の配偶者が絡んだ場合で、トラブルの回避には遺言の作成が有効です。

遺言の作成は、相続人同士が揉める心配のある方以外にも、相続人がいない方、相続人以外に財産を遺したい方にお勧めしています。当然ながら、遺言は相続が発生する前に(被相続人の生前に)形式要件を揃えた有効なものを作成しなければなりません。そのためには被相続人が、日本以外の国で保有している不動産の評価や銀行預金残高など、ご自身の財産をきっちり把握しておく必要があります。

日本の相続税の申告期限は、被相続人の死後10ヵ月以内となっており、相続人が限定的に相続(限定承認)するか相続を放棄する場合には、被相続人の死後、原則3ヵ月以内に決めなければなりません。また、日本の税務署は日本語の書類しか受け付けていませんので、証明書類の翻訳にも時間がかかることを加味すると、やはり早めの準備が肝要と言えます。

日本の税法は世界有数の複雑さで、毎年改正されることから、タイをはじめ海外にも家族と資産がある方は、日本のみにある方以上に相続対策が複雑になります。専門家に相談するなど、できる限り早くから相続対策を講じましょう。


Hongo Toyo Accounting Co., Ltd. 佐藤洋史 Managing Director

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